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命華5


「———う、へ。」


ユナは突然倒れた。

そして、再び起き上がった。


「貴様が、コリンドか?」


ユナはコリンドにそう尋ねた。


「今はそんな事を・・・。」


「コリンドか?それをはっきりさせろ。」


ユナは強い口調でコリンドに尋ねた。

コリンドは撃たれたかのように唖然とし、ああ。と簡単な返事をした。


「貴様に頼みがある。これはユナからの頼みではない、愚かな、愚かな男からの頼みなのだ。」


「———何を言っている?ならば、誰だ・・・。」


ユナは顔を一度下に向け、そして地面に頭を着けた。


「頼む―——その命を、彼を助ける為に使ってはくれないか?」


その口から出た言葉は驚きのものだった。

その言葉には、キサギとレイも涙ぐんだ顔を上げるものだった。


「ユナ、どういうこと?」


ユナは答えず、ただただ頭を下げ続けた。

キサギはそのユナの姿に戸惑う。


「もしも、それを断ればどうなる?」


「こいつが死ぬ、それだけだ。本人もそれを望んでいる、が。そうはさせるわけにはいかないんだ。」


「何故だ?望んでいるのならば・・・。」


「そういう訳にはいかないんですよ。ねぇ?ウィル殿。」


彼女が声を発するまで、そこに居ることに誰も気が付かなかった。


「———聖女。」


「お久しぶりねキサギ。と最後の王。」


「———説明しろ、何故先程まで私の命を狙っていたものが私に頭を下げるのか。」


聖女は咳払いをし、周りを一回り見た後、話を始めた。


「簡単なお話です。そのお方は尊いのです。」


「なんだそれは、例えるなら神を慕うようなものか?」


「いいえ、その人は神様です。」


聖女は言い切り、コリンドは驚いた。

いや、ほぼ全員が驚いた。

彼女の顔は真剣そのものだった。


「確かに、この目で神のような業をした。だが———。」


「肝心の本人は息をしていない。当たり前です、自らの命を貴方の宝に渡したのですから。」


レイはその言葉に頷いた。

どうやらその通りらしい。

だが、そんな事本当に可能なのか?

可能なら・・・マリアを。


「———そして、命の管理者でもあります。やろうと思えば、世界のリセットも可能です。それだけの力を持つ方なのです。」


コリンドは拳を握りしめる。

本当は、今すぐにでも彼を生き返らせたい。

レイを救ってくれた。私は何もできず嘆いていたが彼にはできた。

神だと言われ驚いたが、そこまででもなかった。

何となく、そんな気がしていたからだ。

それに———。


もう、長くはないのだろう。

コリンドは自分の胸に手を当てる。

どうやら、当たっていたらしい。

段々と、痛みが広がっている。

———どうやら、これが彼の力らしい。

ユナ・エルブレグ———彼は、不死殺しなのだろう。

元々ヴァンパイアは不死だ。だが、エルブレグの持つ不死を抑制する力とぶつかり合った結果、不老にまでランクが落ちた。

それによって数は減り、私のみとなった。

彼は、不死抑制を通り越した不死殺しの力を持っているのだろう。


———全く、歳を取ったもんだ。


「いいだろう、この命———イツキに渡してやろう。」


コリンドは立ち上がり、イツキの元まで歩いた。


「パパ———。」


レイがコリンドの足に抱き着いた。

コリンドは足を止める。

そして、レイを抱き上げた。

そのままユナの元へと歩いて行った。


「あっけない因果だったな。」


「そのあっけない因果でどちらも滅びてしまったがな。」


コリンドはユナの近くにレイを降ろし、レイの頭を撫でる。

そして何も言わずにその場を離れ、イツキの近くに立った。


「———すまなかった。あの女を殺したのは私の指示だ。お前になら、殺されてもいいと思った。」


コリンドは息を吐き出し、真っ直ぐに空を見つめた。


「生まれ変われるなら、次は鳥になりたいものだな。自由に、しがらみ無く飛べる・・・。」


コリンドの体は、灰色に変わっていった。

身体中にヒビが入っていき、その姿はまるで泥の像の様だった。


「レイ、すまなかった。父親らしいこと、何もできなくて。」


レイは目に涙を蓄えていた。

彼女はそれを懸命に手でこすって取ろうとした。

しかし、溢れ出して止まることは無かった。

声も、喉に石があるかのように声が出なかった。


———そして、泥は砕けた。




———鳥か、私は地味な色の鳥がいいな。


———私は華やかなのがいいわ。


———白い鳥と言うのもいいな。


ねぇ、貴方は?


「私は———」


何処までも、線引きなく飛べる

渡り鳥になりたい。



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