命華2
「行ったかな。」
花を、真っ二つにすることはできない。
なら、植え替えるしかない。
「おや?君は———。」
僕は後ろに振り向くことなく、その場に座り込んだ。
「こちらに向かなくともよいのかい?」
「ああ、どうせ僕には見えない。ならどっちに向いていてもいいじゃないか。」
すると、足音が近づき僕の隣で音が止まった。
「では、これは私の独り言だ。聞かなくともよいぞ。」
僕はボーっと遠い場所を見つめていた。
———面白くも無い話だ。
死んで、生まれて、殺されて・・・。
それが輪廻だと、相手を恨みながら生き続けた。
私もその一人だった。
戦う度に一人、一人と死んでいった。
その中で、私は耐えきれなくなり祖先たちと同じように相手を恨んだ。
どんな手を使っても、相手を殺そうと考えた。
「何?ロードと・・・もう一人いた?」
「はい、ロードのみ・・・だと思っていましたがもしかすると・・・。」
「いや、あり得ない。ヴァンパイアはロードだけだ。———この報告は、私が皆に伝えておこう。」
部下の一人が下がった。
何故、このことを報告させることを止めたのか。
それはおそらく・・・。
私の自己満足の為だ。
ロードを討つ。奴らを根絶やしにする。
私はいつの間にか自分が成し遂げねば、と考えていた。
「すまないが、少し周りを見てくる。指揮は任せたぞ。」
私は、銃を手に森へと入って行った。
実際、私がやろうとしていることはわかっていた。
これが、人として外れている行為だともわかっていた。
だが、これが私の天命。そう自分に言い聞かせた。
「ま、待って下さい!!」
「なんだ、何か報告でもあるのか?」
「その・・・お一人で行かれるのですか?」
「ああ、寧ろ付いてくるな。こんなことに人員を割くわけにはいかない。これは、私一人で充分だ。」
そして私は、森へと入って行った。
奥に進むと、少し開けた場所に着いた。
そこには、まさに即興物と言わんばかりの小屋のような建物があった。
「———入ってみるか。」
私は、小屋へと入った。
そこは狭く、人が何人も入れるような場所ではなかった。
突然、部屋に泣き声が響いた。
「・・・これは。」
部屋の真ん中にある小さなベットに赤子が居たのだ。
「何故、こんなところに赤子が・・・。」
まさか、これが目撃された者・・・なんてことは有り得ないか。
だが、ここに赤子がいる。ということは近くに・・・。
「———その子から離れて。」
「目撃されたのは、お前か?」
私は後ろに振り返る。
そしてそれと同時に赤子に銃を向けた。
「貴様、ヴァンパイアか?」
「いいえ、違うわ———でも、その子の母親よ。」
「ならばこの子の父は?貴様の伴侶は誰だ?」
「貴方には関係ないわ。」
私は、銃を赤子に更に近付けた。
すると女は「やめて!」と大声を上げた。
「———コリンドよ。」
「・・・何?」
私は、少し驚いてしまった。
この森には、奥に古城がある。
ロードはそこに居る。そう確信していた。
「それは、嘘ではないな?」
「本当よ。話したわ。早く・・・そこから離れて。」
私は、赤子に視線を送った。
赤子は泣いていた。
私には、それ以外も見えていた。
「殺せ」「殺せ」「殺せ」
見覚えのある人々。
この戦いで死んでいった者達。
どんな気持ちだったのだろうか。
ここにもし、私では無ければどうするだろうか。
すぐにでもこの引き金を引くのだろうか。
ああ、引くべきだ。それが正しいのだから。
「———わかった。だが、ここは危険だ早くこの子を連れて逃げろ。」
私の言葉に彼女は戸惑った。
どうやら私は反逆者のようだ。
もう彼らの墓に手を合わせることが出来そうにない。
「・・・どうして?そこに居る子は———。」
「私の標的はロードだ。コリンドなど知らん。」
私はそのまま家を出た。
ふう、と短く息を吐き出しそのまま歩き出す。
「待って!!」
彼女は私に制止するように呼びかけたが私はそれを振り切り歩いた。
歩いている途中、少し疲れて木にもたれ掛かった。
そして顔を上に上げ、目を手で隠した。
———ああ、歳か。いいや、弱くなったのだな私は。
そして、私は小さく息を吐き出し地に腰を着けた。
私は、銃声で目が覚めた。
気付けば辺りは暗かった。
何故か私は銃声の方向に走った。
その方向には、先程の小屋があるからだ。