花畑7
「ふ、フハハハハハ!!・・・ユナぁぁぁ!!」
ウィルは俯いたまま、笑っていた。
ユナはそれに怖気づくことも無く、銃を正面に構える。
「抗う?できるものならやってみろ裏切り者!!」
ウィルは再び走り出す。
ユナは、そのウィルに銃口を向ける。
後は引き金を引くだけ。
だが、それが出来ない。
恐怖では無く、もっと違う何かが邪魔している。
覚悟したのだ、ここで止まるわけには・・・いかないのに!!
「う、うわぁぁぁぁ!」
ユナは引き金を引く。
が、ここであることに気付いた。
———そう言えば、弾込めてない!?
空砲を撃ってしまったのだ。
「全く、意気込みだけは達者だったな。だが、私も貴様の考えに賛成だ。なので手伝ってやろう。何、深く考えるな。」
そう言ってコリンドがユナの前に出た。
そして、その脚でウィルを蹴った。
ウィルはそのぶくぶくと大きくなった肉体を支えきれず、倒れる。
「早く弾を込めろ。起き上がってしまうぞ。」
「え?・・・は、はい!」
ユナは急いで銃に弾を込めようとした。だが、その肝心の弾が、二発しかなかった。
・・・コリンドは、まだ信用しきれない。
この二発を無駄に使うことはできない。
もしもの為に・・・・。
ユナは銃に一発、弾を込める。
———僕は、一撃で父さんに致命傷を与えることが出来る自信がある。
この左目が、それを教えてくれる。
まだ、痛みは残っている。
でも、この程度なら我慢できる。
僕は恨みに身を焦がしたことはない。
「もう一度———動きを止めてくれ、ロード!!」
「簡単に言う・・・。動きを止めれば、仕留められるというのか?その自信はどこから・・・。」
「ある。ロード、貴方があいつの行動を止めさえできれば。」
コリンドはニヤリと笑う。
ウィルは、自我を失ったかのように暴れ回っていた。
その身体はぶくぶくと体積を増やし続けていた。
その姿は醜く、見てはいられなかった。
ユナは目を瞑る。
浮かぶのは、父の姿。
どれもこれも涙を流しているか死人のような顔しか思い浮かばなかった。
だが、左目を開けるとそうではなかった。
父の、凛々しく勇ましく戦う姿。
何事にも、全力で・・・・。
「・・・変わってしまった。でも僕は変わる前の父さんを知らなかった。でも、わかったよ。一つだけ。」
ユナは銃口を上げ、父に照準を合わせる。
それと同時にコリンドがウィルの足を蹴る。
その身体は脆く、簡単に千切れてしまい上半身が地に落ちた。
「・・・もう、終わりにしよう。」
ユナは弾を撃ち出す。
その弾は・・・ウィルの体をかすった。
失敗。
「———終わったか。」
コリンドは腰を下ろす。
ウィルはそこから動くこともせず、立ち止まっていた。
「———ユナ。」
ウィルは、そのぶくぶくと太った肉が剥がれ落ち、自身の体もヒビが入っていた。
「すまなかった。私は———父親として失格だな。」
ユナは何も言わずにじっとウィルを見つめていた。
その顔は不自然に無表情を装っていた。
「———強いな、ユナ。」
彼は小さく笑い、その身体は砂になり、吹き飛んだ。
ユナは俯き、銃を両手で抱きかかえる。
そして———。
「ユナ・・・あの人、どこに行っちゃったの?」
「・・・心配いらないよ、あの人は静かな場所に眠りに行ったんだ。」
ユナは近付いてきたレイの肩を掴んで、その眼を見つめた。
すると、レイは目を擦り出した。
そして、何も言わずにその場に倒れるように眠った。
「———どうした。何か私に話があるのか。」
「———そんなの、一つしかないだろ。」
ユナは銃を再び構える。
「僕が、この因縁を終わらせる。」