花畑4
また、ここか。
見る景色は一面に花が咲き乱れていた。
魔力切れを起こしたのだろうか。
まぁ、それならそれでいいか。
酷い姿になるけど、キサギを助けられることが出来そうだ。
「あれ?また来たの?」
後ろから声が聞こえ、僕は振り返る。
そこには、誰もいなかった。
だが、そこにいた。
透明と言えばそうなるが、その例えとは違う気がした。
僕が認識していないということなのだろうか。
「またって・・・初めて会っただろ?」
「いや、君は僕の存在をしらなかっただけさ。僕は初めからいた。そして君の知りたいことも知っている。」
認識だけで存在すら感じないなんておかしい。
「わかった、ならそのことについて僕に説明しろ。わかってるならできるだろ?」
「いいよ、でも時間がないみたいだから手短に説明するよ。」
僕は首を縦に振る。
そして、ここから話は再び始まった。
———平穏を好んだ。
だが、それは誰にも許されなかった。
彼は正々堂々と戦うつもりはなかった。
彼は正々堂々と戦うつもりだった。
だが、その運命は簡単に裏返った。
「って感じでわかるかな?」
「いや、全然わかんない。もっと詳しく話せよ!」
「ははは。まあ、そんなことだろうと思ったよ。まぁ、簡単に説明すれば・・・。」
後味の悪い裏切りの連鎖。ってところかな?
「連鎖って・・・。」
「簡単に順を辿って説明するとだな・・・。」
ここで、話の流れが止まる。
「どうした?」
「・・・いや、どうやら物語のターニングポイントに来たらしい。俺も気になるから見てみようか。」
「物語?」
「ああ、そうだ。コリンドとウィルの決戦が始まるんだよ。止まっていた歯車が動き出したんだ。———お前との出会いでな。」
僕はいまいち言葉が身に染みなかった。
空間にヒビが入り、割れた。
その穴は暗く、初めは何も見えなかったが、段々と目が慣れ何があるのかが鮮明になった。
「・・・ウィル!!」
「ああ、ウィルだ。今のところいいとこ無しのね。」
ウィルは暗闇の中、体を地面に叩きつけて何かに耐えていた。
僕は、そんな彼の動きを知っていた。
いや、実際にそうだったからわかる。
「黒化が、進んでいるのか?」
「ああ、その通りだ。段々とその痛みは抑えきれなくなる、死ぬまでね。」
「これを・・・ウィルは望んで受けたのか?あの聖女から・・・。」
彼は黙り込んだ。
黙ってしまうと存在を忘れてしまいそうだ。
僕は、自分の左腕を見た。
今は痛みはない。
だが、あの痛みを知っている。
だからこそわからない。何故彼はここまでしてコリンドを倒そうとしたのか。
「———遅かったな。あの程度の爆発で気絶でもしていたのか?」
「レイは何処だ?」
コリンドは、ウィルの正面に立つ。
彼らは向き合った。
————彼らの間合いには、風すらも入ることを許されなかった。