転生?4
「ええっと、つまり突然現れたこの化物達に国が乗っ取られて姫だけでも脱出、カユラを脱出させようとしたが追手が多くここに来るまでに何人もの兵士が倒れてミル一人になったときに僕が現れたと。」
「はい、その通りです!そしてイツキさんは記憶喪失で何も覚えていないのですね。」
僕達は峠を超え、舗装された道が見えてきた。
ミルは相変わらず剣に手を置いていた。僕をまだ信用していないようだ。
逆の立場なら僕も疑うだろう、だが、いい気持ではないな。
「・・・って待てよ、国が壊滅的な状態なのにその国に帰っても大丈夫なのか?」
「まぁ、大丈夫ではないですね。ですが、全く当てが無いという訳ではありません。この先に隠し図書館への入り口があります。そこで化物達の弱点を探します。」
「隠し・・・図書館ね。初めからそこに逃げればよかったんじゃないか?」
「そういう訳にはいかない。隠された図書館、名の通り秘密でなければならない。というのが隊長の考えだったのでしょう。それか存在を知らなかったか・・・。」
隠し図書館、国の裏帳簿とかがあるのかな。
弱点を探るのは良い手だと思うけど、僕のこの左腕を使えばあの化物を退治できる。
・・・そして、疑問がある。
「カユラは、何で国に帰ろうとしてるんだ?そのまま逃げていれば危険な思いをすることはないはずだ。何でわざわざ・・・。」
「それには、私も同感です。貴方様を救う為に命を懸けた隊長や、兵士の活躍を無駄にしてしまうような・・・。」
カユラはピタリと止まる。
そして後ろに振り返り、僕とミルの頬を引っ張った。
「そのまま逃げれば?命を懸けた?そんなこと、私は知らない。ミル、何故兵士達は私を守るの?」
「それは・・・責務、と言えるものです。姫様の為に命を捧げる。それが責務であり、私達の存在意義です。」
「そう、存在意義。ならば私はこの国の姫としての存在意義を作らなければならない。国が窮地に陥っているなら、それを救うのが私の責務。それが姫としての存在意義。」
それだけ。と彼女は言い残し、先を急いだ。
ミルと僕は顔を合わせた。そしてまた歩き出した。
「・・・ここよ。この建物の地下にその入り口がある。」
カユラはそう言って小さな小屋へと入って行った。
それに続いてミルも入って行った。
「———存在意義、か。勇者になればそれも出来るのかな。考えたことも無かった。今はこの左腕、ガ———!?」
突然、左腕に激痛が走った。
いや、正確には左腕周辺に痛みが走った。
見なくてもわかる。僕の腕が段々とこの黒に侵食されている。
つまり制御をすることが出来ていない。
「ッ———!!クッソ・・・。この腕の事についても調べないとな・・・!!」
地面に左腕を押さえつけるように叩きつけ、痛みを忘れさせた。
そして一歩、建物の中に踏み込んだ。