花畑2
実を言えば、僕は自分の事が一番わからない。
聖女は、僕に何を求めているんだ?
「———ああ、クソ。視界が定まらねぇ。」
口には違和感を感じ、それを吐き出す。
吐き出したものの正体を確認する気にもならない。
限界、ああそう言われればそうだ。
だからと言ってここで止まるわけにはいかない。
「こっちだ、こっちから、あの気配がする・・・。」
聖女の気配を辿って歩き続ける。
段々気配は強くなっている。
近付いている。その確信はある。
「あれ?思ったより早いですね。もうちょっと遅くて主人公みたいな登場をすると思っていましたのに。」
僕は顔を上げる。
闇と、視界の歪みで聖女をまともに見ることが出来なかった。
「見つけ———た!!」
「ええ、見つかりました。いえ、見つけてくれたの方が正しいですか?」
「好きでお前を探していたわけじゃない!!」
僕は耳だけを頼りに聖女に殴りかかる。
だが、空振る。
僕は勢いを殺せずに地面に倒れ込んだ。
「避けただけですよ?大丈夫ですか?」
「僕の心配を・・・するなぁ!」
僕は飛び上がるように起き上がり再び聖女に殴りかかる。
またしても避けられた。だが、次は足で踏みとどまれた。
「別に私は貴方と殺し合いをしたいわけではありません。だから———。」
「うるさい!!そんなの、信用できるか!」
僕は、もう一度殴りかかる。
すると今度は何かに抑え込まれるかのように攻撃を止められた。
感覚が鈍っていてそれがどんな状態なのかわからなかった。
「———でも、こうすれば!!」
僕は口を大きく開け、噛みつく。
魔力を吸い取る。
相手にはダメージが、僕には回復が。
ノーリスクハイリターンだ。
魔力を吸っていくと同時に機能が段々と回復していった。
耳には鼓動。
肌には柔らかい感覚。
目には・・・肩が映っていた。
「落ち着きましたか?」
僕は、聖女に抱き締められていた。
「な、どうして・・・?」
「好きなだけ、私から魔力を吸い取ってください。例え、私がそれで死んだとしても構いません。」
「・・・意味が、わからない。どうして、敵のお前がそんな事を・・・?」
僕は口を離す。
そして、彼女から離れようとした。
すると思いの外拘束は強くなく、簡単に外れた。
「どうして、どうしてと言われると・・・。」
聖女は顔を隠していた布を取る。
そして、僕はその顔を見た瞬間、体が震えた。
意思に関係なく、ビクリと。
「私が、貴方を愛しているからです。」
震えが、痛みに変わる。
身体中が痛みに襲われた。
「愛・・・してる?僕はお前に昨日初めて会ったんだ。まさかと思うけど一目惚れ・・・か?」
「いいえ、私は長い間貴方を思い続けました。そして探し続けました。・・・貴方を。」
この聖女は何を言い出すんだ?
病んでいるのか?
それとも、僕が忘れているだけ・・・?
いや、それはあり得ない。だって僕は・・・。
「僕は、元々この世界にはいなかったんだ。だから———。」
「私も、元々この世界の人間ではありません。」
意識が、少しずつ削られていく。
まるで引きずり込まれるかの様だ。
「———眠いのですね。では、子守歌代わりにお話をしましょうか。」
「これは、とある人間のお話。」
「ちょっと強かっただけの生物と、人のお話です。」
———少し、悲しいお話です。




