花畑1
「う・・・ん。あれ?ここ・・・。」
目が覚めると、そこには青空が広がっていた。
いや、そんな事よりも僕は何故ここにいるのかだ。
確か、ああ。あの聖女とかいう・・・。
「呼びましたか?」
そうそう。こんな感じの・・・。
「少しお邪魔してます。久しぶりに来ましたが綺麗になりましたね。」
「・・・!?」
僕は起き上がる。
そう、目の前にあの服装の聖女が立っていた。
「ここは・・・どこだ?」
「貴方が———よく知っているところです。」
聖女は笑う。
何かを懐かしむかのように。
「そもそも、何か用事でもあるのか?僕を殺しに来たのか?」
「そんな事しませんよ。私は貴方に伝えるべきことがあるのです。」
こいつはレイとキサギを襲った。
信用するにはまだ早い。
いや、信用には足らない。
こいつはあの力を使う。それだけで疑う材料としては充分だ。
「率直に言います。私と一緒に来てください。」
「何故だ?お前は僕を、僕らを襲った。そんな奴と共にどこに行けばいい?」
「・・・・そろそろ時間が迫っています。ですから理由は言えません。ただ、貴方は私の元に来ます。」
「あ、おい待て!!どういうことだ!」
強風に煽られ目を瞑る。
「——う、あ?」
辺りは暗かった。
もう夜なのだろうか。
「・・・キサギ!キサギ、どこだ!?」
僕は飛び起きて、辺りを見回す。
夜だが、月光でそれとなくは見えていた。
「・・・イツキ。よかった無事だったんだね。」
声が聞こえ、その方向に振り向くとそこにはユナが立っていた。
ユナは右目を包帯で抑えていて、体もボロボロだった。
「・・・どうしたんだ?その怪我。」
「・・・僕、レイを守ったんだ。僕は避けきれなかったけど。守ったんだ・・・よ。でも、僕はそこで気絶して・・・目が、覚めたら・・・レイが、いなくて。」
「・・・そう、か。」
ユナの言葉は震えていた。
悔しい。言葉では言わないがその言葉が頭の中で駆け回っているのだろう。
正直、僕も血液が沸騰している。
「・・・それで、キサギは?」
「キサギ・・・は。」
ユナは、ふっと頭を小屋に向ける。
僕は、小屋に向かって走った。
そして、ドアを力強く開ける。
そこには、横たわっているキサギがいた。
「キサギ!」
その姿を見た瞬間、涙が出そうになった。
何故かわからない。
「きさ———。」
その背中は、黒く染まっていた。
「あ・・・イツキ。起きたのですね、すみません・・・今、ちょっと動けなくて。」
キサギは座り込んでいて、こちらに顔を向けなかった。
「そう・・・か。」
歯を噛みしめる。
ああ、こういうことか。
「・・・ちょっと、外に出てくる。」
「はい・・・お、お気を———付けて。」
僕は、力一杯に閉める。
出来るだけ、キサギを見ないように。
黒い。
あれは蠢くものと同じだ。
「聖女・・・やりやがった。そういうことかよ、時間が無いって・・・。」
あれは、人を狂わせる。
カユラはそれで狂った。
だとしたら、やることは一つだ。
「僕は、レイも、キサギも・・・助ける!!」
「・・・レイ?レイがどこにいるのか、知ってるの?」
ユナは、そのボロボロの体を揺らしながら僕へと近付いてきた。
「ねぇ、僕も。僕もついていくよ。・・・・全部、僕のせいなんだ。だから、この責任を・・・!!」
「———ユナ。お前はここに残れ。」
僕は、ユナの肩を掴む。
「ここから先は、危険なんだ。死ぬかもしれない。」
「で、でも!僕は———僕のせいでキサギが、レイが!!」
ユナの瞳には涙をためていた。
負い目を感じている。
・・・負い目を感じて、その負い目を責任取ろうとする。
僕の頭の中には、とある人物が思い浮かんだ。
「そう、ですか。僕、足手まといなんだね。」
「———。」
僕は、ユナに何も言うことは出来なかった。
「わかったよ。僕、ここで待ってるよ。そうだよね、僕は、父上にもコリンドにも劣っている。僕が行っても何もできずに死んじゃうよね・・・。」
ユナは、トボトボと闇に消えていった。
これで、いいのか?
僕は少し迷う。
だが、同時に迷う時間も無いと感じ、自分の顔を叩く。
「・・・誰も、死なせない為にはこれしかないんだ。」
僕は拳を握りしめ、歩き出す。




