因縁6
コリンドは、笑ってこそいたが、冷たい目つきでキサギを睨んでいた。
どうやら、彼はキサギを未だに疑っていた。
レイはコリンドに顔を埋もれさせながら抱き着いていたが、それに気付き彼女は顔を膨らませ、顔を上げ、コリンドを見つめた。
「・・・レイ、どうして私をそんな顔で見つめているんだい?」
「だって!パパがキサギを睨みつけてるから!」
レイのその言葉に驚いたのか、コリンドは目を見開いた。
そして、コリンドは笑った。次は、あの冷たい目つきではなかった。
「どうやら貴方は良い人の様だ。すまなかった、どうしても初対面の人を疑うのが癖になってしまってね。」
コリンドは深々と頭を下げる。
そんな彼に、キサギはたじろいだ。
「い、いえ・・・謝らないで下さい。疑うことが悪いという訳でもありませんから。」
コリンドは「ありがとう。」と言って頭をゆっくり上げる。
レイもそんなコリンドの真似をして頭を下げ、頭をすぐ上げた。
「本当に、レイを守ってくれてありがとう・・・。感謝しきれない。」
キサギは、その言葉に違和感を感じた。
いや、多くの事に違和感を感じた。
「レイをこんな山に置いて・・・何をしていたのですか?」
キサギは、思ったことをそのまま口にした。
コリンドは、少し寂しそうな笑いをし、顔を半分隠す。
「こんなことを言っても信じてもらえないかもしれませんが・・・。」
コリンドはハッと、隣にレイが居ることに気付き、咳払いをする。
「・・・今の話は忘れて下さい。」
コリンドはそう言い、レイを抱き上げる。
「・・・私は、ここを去ります。・・・貴方には感謝しきれない。」
「え・・・?い、いえ待って下さい。何処へ行くのですか?」
「さぁ・・・どこに行くのでしょうか。それこそ、風の吹くままに、ですかね。」
キサギはレイに視線を変える。
「・・・レイは、レイも行くのですか?」
コリンドは、レイを抱きかかえたまま囁く。
「レイ、私は・・・これからどこに向かうかもわからない旅に出る。レイは・・・私と一緒に来るかい?」
レイは、少し考えるポーズをとり、うん。と自分を納得させるかのように頷いた。
「私・・・私も行く!パパについていく!」
コリンドはにっこりと笑い、レイの頭を撫でる。
レイはそれがうれしいのか、目を瞑りながらも口角が上がっていた。
キサギはそんな二人の姿を、うっとりと眺めていた。
そんなキサギにコリンドは気付き、照れを隠すようにレイを降ろす。
「では、このことを伝えておいてくれないか?その二人に・・・私達は、ここに長居する訳にはいかないんだ。」
コリンドはそう言ってレイの背中を押す。早くこの森から出ようと言わんばかりだった。
「ま、待ってくださ・・・。」
キサギがそう言いかけた時、「見つけた!!」という大声にかき消された。
「・・・何故、いるのですか?」
コリンドのその声は、とても低くて、尖った気配を出していた。
声の主は、息を荒げている少年、銃を背負った彼。そう、ユナだ。
「ユナ!どうしたんだ!?」
その後ろからイツキが走ってきた。
ユナとコリンドは、その距離感をぼやけさせるほどに異様な空気感だった。
「ああ、困った。見逃してやったのに・・・私の前にのこのこと現れて、よほどに死にたいのか?」
「僕が、お前を仲間の所に送ってやるよ!」
ユナは銃を素早く構え、「祖よ、力を。」と呟き、その引き金を引いた。
その弾丸は、コリンドに向かって一直線に。
しかし、コリンドはその弾丸を軽々と避け、ユナの首を掴み地面に叩きつける。
「———ア。」
「弱い、よくこんな腕で私を殺そうと考えたな。」
ユナは、息をするのが精一杯なのか音を上げていた。
だが、ユナはコリンドの手を掴み、口を開ける。
「お、前なんか———に、ただ、最後に残っただけのお前に!!」
コリンドはその言葉に怒ったか、手の力を強める。
ユナは更に苦しそうに足をバタつかせる。
「やり、すぎだ!!」
イツキはコリンドに蹴りを入れる。
しかし、コリンドはその一撃を腕で止める。
「貴様、エルブレグ家のものか?」
「いいや、だけど・・・こいつを殺させはしない!」
止められた脚に、魔力を流す。
「———な!?」
コリンドがそう声を上げ、ユナからs手を離し後ろに下がる。
ユナはゴホゴホと咳込む。
「———貴様、一体・・?」
コリンドは驚きを隠せずにいた。
「ま、待って!待って下さい!」
「ぱ、パパ!どうしてユナをいじめるの!?」
キサギとレイが、二人の前に出て制止する
コリンドは、レイに大声で「どけ!」と怒る。
「そ、その通りだ。これは、僕とコリンドの問題だ!」
ユナはゆらゆらと立ち上がる。
「ああ、その通りだユナ。よく言った。だが少々違うな。」
その声は後ろ側から聞こえた。
声の主は、銃を携え、髪を全て上げた男だった。
「我がエルブレグ家と、ヴァンパイアとの因縁、だろう?」
「え———?」
ユナはその男がこの場に現れたことが驚きの様だった。
そして、コリンドは先程までの余裕を無くした。
「ウィル・・・エルブレグ!!」
「いいや。ウィル・アズラ・エルブレグだ。そうだろう?コリンド・ヴァンパイア・ロード。」
そう男は不敵に笑う。
だが、イツキはその後ろにいた、顔を隠した女性に視線が向く。
彼女からは、何か・・・不気味なものを感じた。




