道 2
———声がする。懐かしい、という程では無い。
ああ、そういえば僕は何に悩んでいたのだろう。
もう、今更手遅れだ。
「おい。起きろ人間。今とてもいいところじゃ。」
僕は、顔を起こす。
目の前には・・・彼女たちの姿が見えた。
「・・・カユラ!?」
「見てみろ、絶体絶命だ。その名の通りもう終幕だ。少々味気ない物語だったがう。」
気絶し、流血しているミルと、それを守るように庇うカユラ。
そしてその目線の先には、狂ったように笑い続ける女性、黒く蠢く何か。
「だ、駄目だ。このままじゃカユラもミルも死んでしまう・・・。」
「そうだなこのままだと、死んでしまう。そこでだ人間。一つ交換条件を設けたい。貴様が、その槍を自らの腹に突き刺すというのならば、この二人を助けてやろう。」
僕は、地面に突き刺さった槍を見る。
禍々しいその槍は見ただけで恐怖を覚えるものだった。
これを、自分の腹に刺す。
つまり・・・自分と引き換えに二人を救う。ということなのだろうか。
「どうやら壊れて記憶が所々無くなっているようだな人間。助けるつもりはなかったが、面白い物語を見せてもらった礼だ。そのくらいのことはしてやろう。」
「・・・わかった。その要求を受けよう。だから———。」
「せっかちな奴だ。さてと、あれはまだ動くかな。」
そう言ってフェルミナは立ち上がり、右側に手を突き出した。
するとそこは光で歪み、その手を引くとそこには膝を抱えた人間がいた。
「さて、久々じゃが入るか。よっと。」
フェルミナはその上に乗るかのように飛んだ。
すると足からその体に吸い込まれるかのように消えていった。
「え・・・ど、どういうことだ!?あいつは・・・・。」
「うるさいぞ・・・。今色々な諸設定をしているところじゃ。静かにせんか・・・。」
そう言ってその人間は起き上がった。
「え、ええ!?」
「だからうるさいと言っているだろう!」
僕の顔に拳がめり込む。
「全く・・・せっかちな上、話も聞かんのか。」
「お、お前・・・フェルミナ、か?」
ああ。
そいつはそう答えた。
「これは器だ。人も神が造ったのだ。これくらいあってもおかしくはないじゃろ?」
フェルミナはそう言って両手を揃えた。
すると地響きと共に門が顕現した。
そして門を開けた。
「さて、心の準備をしておけ。すぐに帰ってくるからの。」
そして、眩い光を放ちながら門と共にその体は光に消えていった。
「本当に・・・大丈夫なのか?」
「よし、終わったぞ。」
「早!?」
「わしは人間とは違うのでな。ほれ、その眼で確認してみろ。」
僕は門の先を睨みつけた。
そこには閉められた門の外に横たわるカユラとミルの姿があった。
「・・・よか・・・った。」
「ふう、久々にこの姿で活動した。さて・・・次は人間の番だ。」
フェルミナはその身体から飛び出るように分離し、あの椅子に座った。
彼女は不敵に笑う。
———終幕だ。