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異世界転生とその代償

「おれは須藤拓人すどうたくとだよ」


「須藤…?」



能面の様に無表情であった女神が眉を寄せた。

それ程までに、この女神にとっては忘れ得ない名前なのだ。



「え、おれの事知ってんの?」


「いや、お前の事は知らない。だが、須藤要なら知っている」


「要って、おれの兄ちゃんだよ」


「なるほど、だから苗字が一緒なのだな」


「そうそう。ってそんなことよりもさ、此処何処なの?」


「そうだな…此岸と彼岸の間、とでも言うべきか」


「??漢字ばっか使わないでよ、分かんない」


「人間は漢字に疎いのか。人間の言葉でいうと、この世とあの世、とでも言うのか?」


「嗚呼、なるほど!で、女神様はこんなとこで何をすんの?」


「私達女神族がすることはただ一つだけだ。お前達の様な人間に、寿命が尽きるまで生きてもらうこと」


「そこで与えている選択肢がある。」


「選択肢?」



ゴクリと生唾を飲む音が響く。

拓人の心臓は、バクバクと大きな音をたてた。



「須藤拓人、異世界に行きたくないか?」


「い、異世界!?」



先程まで高鳴っていた心臓は、元の心拍数に戻っていた。

それはそうである。いきなり異世界なんて言葉が飛び出せば誰だって驚きで落ち着くだろう。

が、拓人の場合驚いたのでない。

喜んだのである。

高鳴っていた心拍が元に戻ったのも喜びのあまりのことである。



「そ、それは!可愛いヒロインと魔物を倒す冒険しながら最終的に魔王を倒してヒロインとハッピーエンドの、あの異世界ですか!?」


「??魔物や魔王なんているわけないだろう?そんなものがいたら寿命を全う出来ないではないか」


「はぁ?!そんなの異世界じゃない!!」



20歳を超えた大人が随分子供みたいな言い方ではあるがそれも拓人においては仕方の無いことなのである。

拓人は昔ある異世界アニメを観た。それ以来どうにも異世界に夢やら希望やらを託しているのである。

その夢が叶うかと思った矢先、結局は叶わないと知らされたのだ。抗議せずにはいられないだろう。



「もしかすると。人間とは異世界の定義も違うのか?ならば、説明せねばならないか」


「我々女神族においての異世界とは、未来の日本の事を言うのだ」


「未来の、日本?」


「嗚呼。科学も、医療も進化した世界で寿命を全うしてもらう。それが私達が呼んでいる、異世界転生だ」


「………」



拓人にとってはそれこそ驚きだった。

日本未来なんて今でさえ進歩してるなか、それ以上なんて想像するのも難しい。

一体どうなっているのか、楽しみな気持ちもある。

が、それ以上に。疑問が生じたのもまた然りだ。



「でもさ、未来ってことはおれの子孫がいるわけだろ?どうすんの?」


「お前が異世界転生を選択したなら、お前の子孫は存在しないことになる」



それは、未来を変える、あまりにも大き過ぎる代償だった。

拓人は産まれて初めてに等しい程に、大きな選択を迫られていることに気が付いた。

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