男と女神
男が目覚めたその世界は、異様な程に、"白"かった。
白を基調とした、なんてものではなく、本当に真っ白なのだ。
壁も、床も、天井も、眩しい程の真っ白だ。
その真っ白な部屋-部屋と呼べるかも怪しいが-はおよそ6畳ほどであり、家具は全くなかった。というより家具どころか部屋に入る為の扉すらない。
この部屋なんなのか、自分はどうしてここにいるのか、一体どうやって自分はこの部屋に入ったのか、、
疑問は尽きることなく、男の脳内を駆け巡る。
ただ、男はじっと答えを考えはしなかった。
というのも、男はどうにも大人しくしているのが苦手な性格であり、「考えてもしょうがない、とりあえず動いて答えを探そう」という考えの持ち主であった。
それでも答えが分からない時は、「仕方無いから様子みるか」と疑問を全て投げ出すのだ。
そんな性格が幸いしてか、男はこれまでの人生比較的早く場に馴染んでいた。学生時代も、常に周りには友達がいた。社会人になっても同僚は勿論のこと、上司や後輩からも慕われていた。
そんな人生も、つい先日終わってしまったわけだが、男はそれを知っているのか知らないのか、特に気にしてはいなかった。
まったくもって珍しい男である。
「うーん どうすっかなぁ。流石になんにもないとなぁ」
男は、白い床に寝っ転がり、ゴロゴロとのたうちまわった。
そんな男に、声がかけられた。遠くまで響くような、澄んだ声だ。
「へ?あれ、もしかしておれ以外に誰かいる?」
「やはり、妙な男だな…」
小さく呟きながら男の前に姿を表したのは淡い栗色の長い髪を靡かせた、少女だった。
男の10は下かと思わせるその少女は、歳に似合わず大人びていた。
表情は能面でも被っているかのように変わらず、話し方すらも、淡々としていた。
「か、、、」
「ん?どうかしたのか?」
「か、可愛いぃぃぃぃぃ!!え、何天使!?女神様!?天女!?」
やはり、妙な男である。
いきなり目の前現れた少女に驚くどころか、ここまで騒ぎ立てるのだ。
これには流石の少女も、目を瞬かせた。
「……おい、お前は何者だ?」
「へ?おれ?おれは______」