変な岩に襲われたけど女の人が助けてくれました!やったぜ
魔王討伐の旅に出る呪いをかけられたキンタは、賢者ヨシアキに会うため太陽が燦々と照りつける荒野を歩いていた。
「進めど進めど景色が変わらない……」
赤くひび割れた股ズレの様な大地をキンタは進んでいる。周りに人が居るような建物は何も無い。
遠方に見えるのは黒く変色した枯れ木であり、それは縮れ毛の様で処理残しを思わせた。
歩き疲れたキンタは引きずりながら持っている光願剣・絶を大地に突き刺し、その刀身の腹に背を預け寄りかかった。
キンタは上を向く。
空には鷹らしき鳥が悠然と青空を飛んでいる。何者にも縛られず自由に空を飛ぶその姿を自由の象徴だとキンタは思った。
自身の境遇と正反対のそれにどこか腹立たしく感じたのか、キンタは足元にあった小石を鳥に向かって投げる。
しかし腕力が無いキンタの腕で飛ぶ鳥に小石を打つけるなど無理な話である。
放物線を描きながら明後日の方向に飛び、小石は変わった形の岩に打つかった。
自身の力の無さにキンタは落ち込んだ。
「やっぱり無理だよ帰りたい……んふぃ!」
その時キンタの下半身を激痛が襲う。キンタは自身の股を抑え身悶える。この激痛は女神によって刻まれた呪い、冒険を拒むと激痛が発する禁呪印による物だ。
想像してほしい。もし局部にマチ針が沢山刺さったらどれ程痛いだろう。
キンタが味わっている痛みは限りなくそれに近い。いやそれよりも痛い。
痛みを快楽に変換出来るMはこの痛みはご褒美かもしれない。しかしキンタはMでもSでもない普通の人間である。
こんな痛みを味わうなら局部を切り落としてしまおうかとキンタが考えている時、周りで岩が砕けた様な音が響いた。
「うっ……なんだ?」
キンタは涙によってぐしゃぐしゃとなった視界で何かが動くのを見た。
キンタは涙を拭い確認する。
「これは……」
動く物の正体は岩と小石が集まり人型の形を成している奇妙な物であった。
人型の岩は砂利をパラパラと落としながらキンタに向かって歩き近付いてくる。
「なんだよ……来るなよ……」
人型に集まった岩の集合体はまるで否定するかの様に体を震わせる。
恐怖を感じキンタは地面に突き刺した剣を抜き、剣先をゴーレムに向けた。
「くっくりゅな!」
赤子が玩具で遊ぶ様に剣を振るうキンタ。しかし腕力の伴わない剣の振りなど全く威嚇の意味を成さない。
岩の集合体は上半身を独楽の様に回しながらキンタに飛びかかった。
「我願う。汝に護りの盾を。拒絶の姫君!」
凛とした女の声が響き渡りキンタの周りに貞操帯の様な物が現れた。
岩の集合体が貞操帯にぶつかり、間に火花が巻き起こる。
突然の状況で呆然とするキンタ。
「危ないわよ。こんな所で何してんのよ」
キンタの後ろに赤髪の女が現れた。
女はへっぴり腰のキンタを尻を蹴倒し、「邪魔」と言って岩の集合体に手を向けた。
「我願う。罪重ねし者に裁きを。空射聖!」
女の掌から白い矢が飛び出した。
白い矢は真っ直ぐな残光を描きながら岩の集合体に激突し、上半身の回転を止めた。
「まだまだいくわよ、空射聖!」
女の叫びと共に数多の白い矢が飛び出し岩の集合体を貫いていく。
しかし腰があらぬ方向へ曲がりながらも岩の集合体は拳を振り上げゆっくりと歩く。
「眠りなさい」
静かに女が指を弾いた。すると岩の集合体に刺さった矢が爆発し、岩の集合体は散らばって元の小石と岩に戻った。
舞い上がる砂煙の中でそれを寂しそうに見る女。その姿をキンタは美しいと感じた。