死体
死んだ。
私は死んだ。
死んだ理由がわからない、だけど今の私は畳の床の布団に倒れていて、顔に白い布を被せられている。
私は死んでいる。
線香の香りが私の寝転ぶ畳の部屋に充満している。
私は私を見下ろす。
私は死んだ私を見て、やっぱり死んでるんだなと改めて自覚する。
喪服の人々が私の周りにいる。
私を囲い布団を持ち上げると、布団ごと私の身体をちょうど人一人が入る木で作られた箱に入れた。
そのままきっと私は火葬されるのだろう。
正直言うと嫌だ。
火葬されれば私という身体はなくなり、私という魂の入れ物が亡くなるのだから。
私は死んだ。
私はまだ生きていたい、今あの身体に戻ればもしかしたら生き返るのかもしれない。
私は半透明な自分の身体を死体の私に、かぶせてみた。
しかし透き通った水のような波紋が半透明の私に伝わるだけで、すり抜けてしまった。
私は死んだ。
私は生き返れないんだ。
ほんのうっすらとだけど生前の記憶が脳裏をよぎる。
これは、死ぬ直後の出来事だ。
私はいつもの通学路を使ってを家に帰る途中、背中をナイフで誰かに刺されたんだ。
痛かった、苦しかった、辛かった。
なによりも私を殺した相手が憎かった。
これで終わり、そう終わりだ。なにもかも。
私の身体を乗せる車が来たようだ。
そこまできて私は何故か不思議と落ち着いた。
これでいいんだと思えてしまった。
さっきまで私を殺した相手が憎かったのにどうして車がきた瞬間、心が落ち着いたのだろう。
喪服の人々が私を車に乗せて走り出す、きっと葬儀場で今日はお通夜。
そして最後には火葬だ。
火葬されて骨だけになり、肉体は残らない。
死んだ。
私は死んだ。
これからどうすればいいのだろう、これからどこにいけばいいのだろう、これからどうしたらいいのだろう。
そもそも私なぜ死んだのに、此処にとどまっているのだろう。
私は死んだ。
死んだ。