始まりの夜
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こんなことがあっていいのかな…これじゃあまるで
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―3月1日0時
携帯を見つめながら、日付を跨いだ
その時の私は焦っていた
指先の震え、頭から足元にかけての冷や汗
送っちゃった
とうとう送ってしまった
良かった!
…いや、やっちゃった?
問答を繰り返す
(…既読にはならないよね、夜中だもん)
少しの安心感と少しの残念感
もう、寝ようと携帯を置き布団をかぶった
『ねぇねぇ』
深い声で誰かが話し掛けてくる
(何よー…こんな真夜中に)
『李木ちゃん、起きてよ』
聞きなれた声
私の名前を呼んでいる
これは、これは…
頭まで掛けていた布団を首もとまでずらした
目の前にはよく知っている男
「へっ!?」
驚いた、重たい瞼も一気に開く
『李木ちゃん』
「っ南峰!!」
頭のなかは真っ白
ここは、確かに私の部屋
携帯を置いて、寝ようって布団をかぶったよね
暗くてよく見えないけど、この目の前の男の声は確かにあいつ
パニック
待って、あ、夢だ
今、何時
その前に部屋真っ暗じゃない、まだ夜中だよ
もう一度目を閉じよう
そうだよ、多分印象に残ったことは夢の中に出てくるって言うでしょう、それ
勢いよく布団を被り、目を閉じた
(もー、やだやだ)
夢の中
だとしてもその時の私はやけに勢いがあって、かと思えば冷静で、すごく現実的だった
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