関門
「なぁ、学校の帰りに物凄い女に絡まれたんだが」
『はぁ?どういうことだよ』
家に帰り着いた後、亮は大輝に連絡をとった。理不尽に暴力を振るわれた彼としては、誰かに八つ当たりしないとやっていられないというのも理由の一つではある。
「黒田さんの友達を名乗る女子にいきなりぶん殴られた。露払いだとか言ってたけど」
『あぁ、あぁ!三沢のことか』
「顔見知りなのかよ」
『ただのクラスメイトだけどさ。黒田さんに男が寄り付かないように、常に目を光らせてる女子だろ。確かにありゃあ普通ではないかもな。あいつのせいで黒田さん人見知りになったんじゃないかって思うぐらいだし』
「あんなのいたらどうしようもないだろ…」
『亮、これはもしかするとチャンスなのかもしれないぜ?この機会に女子と仲良くなる術を学んでこい。黒田さんにアプローチかけるのはその次だ』
「アプローチってなぁ…まぁ大輝に誤魔化してもしょうがないのは分かってるけど。まぁ黒田さんと仲良くなりたいとは思ってるよ」
『第一関門だな。明日黒田さんを食堂に誘ってみるから、上手く行ったらお前にも教えるよ』
「さんきゅ。じゃあまた」
『あぁ。GOODLUCK!』
親友の調子のいい言葉に乗せられているだけなんじゃないかとも思うが、多少やる気になってきているのも事実だ。
「たまにはらしくない事してみっかな」
誰にともなく、決意の言葉を漏らした。