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労い
ドサッと机にプリントを置き、亮は夏帆の隣に腰をおろした。
「何それ?」
「今日の生活アンケートだよ。渡辺先生に押し付けられた」
「上手く使われてるわね」
「悪く言えば人使いが荒いとも言えるがな!」
しばらくは一人で集計を行っていたが、効率が悪すぎると察した亮は夏帆に頼み込んで手伝ってもらったのだった。
「あ〜…っ」
「やっと終わった〜」
大きく伸びをして、脱力する亮と夏帆。雑談と平行して作業をしていたためか、予想以上に時間が掛かってしまった。
「サンキュー、俺はこれ先生に届けてくるよ」
部屋を出る間際に亮が肩越しに目を向けると、唯はペンを握ったまま眠りこけていた。
「先生、終わりました」
「おうご苦労さん」
亮から書類と集計結果を受け取ると、渡辺は「少し待っててくれ」と言って職員室の奥へと姿を消した。
周りに教員しか居ないアウェーな空間に残されて、亮は一人立ち尽くす。気分がそわそわしてきた頃合いに、渡辺が引き返してきた。
「折角頑張ってくれたからそのお礼だ。付いてきてくれるか」
渡辺が先導するのに続いて、亮は彼の背中を追った。




