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プロローグ

四月。

仁科亮は、高校二年の春を迎えた。

教室が変わり、周りの人間関係も一新され、あれからもう二週間が経つ。特に部活にも入っていない彼は、今日は図書室にでも立ち寄った後に家路につこうかと考えていた。

席を立ち、教室を後にする。亮の隣には誰の姿もない。唯一とも言える親友とクラスが離れてしまってからは、ずっとこうだった。

「まぁ、そんなもんだよな」

いくら親友とは言え、クラスメイトよりも自分を優先するという訳にもいかないだろう。それに、あいつは黙っていても自然と人が寄ってくるほどの好青年だ。邪魔をするのは不粋というもの。


益体の無いもの思いに耽って歩いているうちに、目的地に到着した。ここにいると、気分が落ち着く。進級して以来、図書室は亮にとっての隠れ家のようなものになっていた。

「新刊入ってるか〜?」

誰にも聞かれる心配のないくらいの音量で、独り言を呟く。毎日顔を出してはいるのだが、こうして在庫をチェックするのはたまらなく楽しい。彼が手を伸ばす先は、ライトノベルのコーナー。要するに、亮はいわゆるオタクというやつだった。

公立高校でありながら、この学校の図書室はやたらとライトノベルの揃いがいい。それゆえに、ここは彼のお気に入りの場所なのだ。

「…わっ」

ぬっ、と突如彼の目の前で何者かの腕が通り過ぎ、驚きの余り声をあげてしまう。本を抱えた少女が無愛想な目線を寄越してきたが、結局何の詫びも入れずに立ち去っていった。

「んだよアレ、ムカつく…!しかもちょうど俺が借りたかった本じゃん!」

負け惜しみに、図書室を出て行く少女の後ろ姿を睨みつけてやったが、彼女がそれに気付くことはなかった。

仕方ない、今日は大人しく帰るかと諦め、名残惜しい気持ちを堪えて亮は帰路につくことにした。


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