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第3話 チュートリアル

「了解しました。ただいまよりチュートリアルを開始します」


 そうメイトが言うやいなやまた目の前のもう一人の自分が光った。そこにはいかにも駆け出し冒険者って感じの装備をした田中が立っ…自分のアバターが立っていた。


「初心者装備の装備を確認しました。次は武器の生成に移ります。目の前にある水晶玉に両手をのせ、武器の形状を頭の中で考えてください。ただし、想像する形状は片手剣の規格にあてはまるものにしてください」


 また突然、目の前に水晶玉が現れた。

(これ…心臓に悪いな)


 とりあえず言われた通りに両手を水晶玉の上にのせた。そしてイメージを送りこんでゆく。するとだんだんと水晶玉が輝きだし、ひときわ大きく光ったかと思うと手の中には一本の刀が握られていた。


【初心者の片手剣:所有者の望む姿形をした片手剣、ATK.85】


(やっぱり片手剣サイズとなると少し短いし、それにそりが甘いなぁ、これもスキルを進化させてゆけばどうにかなるのかねぇ)


 ためしに抜刀してみると見た目は真っ直ぐな短い刀なのだが、そりが甘いし峰の部分にも刃がついている。


(これじゃぁ、安心しろ峰打ちだ…ってできないじゃん。まあ初期装備だしこんなもんだろう)


 俺が刀?をいじっているとメイトが話しかけてきた。


「最後にアクセサリーをひとつまで作ることができます。ただし、装備することで発動する効果などはありませんのでご注意ください。作って欲しいアクセサリーをおっしゃってください」


(それは素晴らしいな、やっぱりあれがあると安心するし)


「それじゃあ、赤のヘアバンドをお願いします」

「ヘアバンドですか?相変わらず変わったお方ですね。了解しました。アクセサリーの生成を確認、実体化します」


 また一瞬光ったかと思うと目の前のアバターには注文通りの赤のヘアバンドがされていた。


(それにしても田中は恐ろしいくらいヘアバンドが似合わないなぁ)


「これでよろしいですか?返納も可能ですが」

「うん、ちょっと似合ってないけどこれでいいよ」

「了解しました。続いてアバターとプレイヤーの統合を行います。アバターの額に自身の額をつけてください。その作業の後、アバターとプレイヤーの統合が完了します」


 言われた通りにアバターの額に自身の額をつけようとしたが…


(田中と額をくっつけたくない、でもくっつけなくては進まない…でもやっぱり田中とは…)


 一人でグルグルと思考のループにおちいっていく…


「馬鹿なこと考えるないで早くしてください…」


 と、少しイライラしたような声が聞こえた。そのメイトの台詞でようやく我に返り。渋々額を田中の額にくっつけた、と思ったら視界が180度変わっていた。


 服装もさっきまで田中がきていたものにそっくりだし、これがアバターとプレイヤーの統合のようだ。


「動作に支障などはありませんか?」


 その場で跳んだりと、軽く身体を動かしてみたが特に違和感は感じらへない。むしろいつもより軽い位だ。


「うん、全然問題ないよ」

「了解しました。この場で戦闘などに関してのチュートリアルを始めます。スキルなどの使い方などはわかりますか?」

「特に問題ないよ。予備動作をとってあとは頭の中でアーツ名を唱えるか、口で唱えればいいんだよね?」

「はいその通りです。まずはあちらにある案山子に片手剣の基本アーツのスラッシュをあててみてください」


 後ろを振り向いてみると確かにシンプルな案山子が立っていた。腰にさした片手剣を抜いて構える、そして間合いを詰めたら


『スラッシュ』


 下位アーツを表すほんのりと青いエフェクトを出しながら予想通りの起動に刀?が振るわれた。


 ズバッッ


 案山子を切る感覚と気持ちのいい音を出しながら案山子が斜めに裂ける。そして光る塵となり消えていった。


「お見事です。続いて対魔獣戦に望んでもらいます。なお攻撃を受けても一切ダメージを負いませんので安心して戦ってください」


 目の前の地面に魔法陣のようなものが浮かび上がりそこからオオカミ?が出てきた。


「この魔獣はDランクの狼煙狼(ビーコンウルフ)となります。口から独特の匂いがする白い煙の塊を吐くのが特徴です。その匂いはいろんな魔獣を引き寄せます、個体自体はあまり強くありませんがその特性によりDランクという位置づけになっております。もちろんここにはこの一匹しかいませんので気にせず戦ってください。準備はよろしいですか?」


(刃物を持っての戦闘かぁ、ジッちゃんバッちゃんとの山籠りを思い出すなぁ)


 ゆっくりと息を吸い込み頷いて


「大丈夫」


 と頷いた。


「それでは始めます。カウントがゼロになったらスタートです。ては、カウントスタート」


 10、

 ゆっくりと鼻から息を吸い込む


 9、

 吸い込んだ息を一回止める


 8、

 それを口からゆっくりと吐き出す


 7、

 それをゆっくりと繰り返す


 6、

 刀の柄に手をかける


 5、

 ゆっくりと抜刀する


 4、

 それをしっかりと正面に構える


 3、

 神経を研ぎ澄ませ目標を見据える


 2、

 半歩左足を前に出す


 1、

 息を大きく吸い込み


 0、

 になると同時に相手がこちらに走ってくる。相手が大きくこちらに飛びかかってくる、間合いに入った瞬間、


「フッッ、」


 息を吐き出すと同時に相手の喉を正確に切断する。刀があたると同時にクリティカルヒットを表す赤いエフェクトが出た。喉をいられた狼煙狼は受け身も取れず、飛びかかった勢いのまま地面を滑っていく。そして、案山子と同じように光る塵となって消えていった。


(久しぶりだったけど腕はあまりなまってないようだな)


 ゆっくりと納刀し終えるとメイトが話しかけてきた。


「お疲れさまでした。喉を狙った正確な攻撃によりクリティカル判定が取られましたので一撃で倒せましたが、普通は何回か攻撃しないと倒せないぐらいの体力を持っていますのでそこは注意してください。これにてチュートリアルを終わります。あとは神からの祝福≪ユニークスキル≫を貰って冒険の始まりです。ではあそこの魔法陣の上に乗ってください」


 そう言ってメイトが指差した先に大きな魔法陣が現れた。


「あの魔法陣に乗ると異世界への転移が開始されます。その道中、一柱の神に出会うでしょう。そこで貴方は神からの祝福≪ユニークスキル≫を授かります。それはきっとこれから生きて行く上で貴方の強い見方になることでしょう。どうぞ、魔法陣の上にお乗りください」


 そううながされ、俺は魔法陣の上に乗った。すると段々と魔法陣が輝き出す。俺は何か言わなきゃという思いにかられた。だけど上手く言葉が出てこなかった。そして一言…


「ありがとう、また会おうな」


 そういうとメイトは驚いたような顔をし、そして嬉しそうに微笑んだ。そのほうを一筋の涙が伝っていった…


「貴方のような…いえ、スバルに会えて良かったと思います。これから大変な冒険がまっているでしょう、私はスバルの活躍を期待していますよ」


 そう言って微笑んだメイトの顔はとても美しかった。そしていよいよ魔法陣の輝きが視界を遮るほど強くなった。


「ありがとう‼」


 俺はメイトに聞こえるようにそう叫んだ。

 メイトは鈴のような綺麗でよく通るこえで最後にこう言った。


「スバル、どうか死なないで…そして、貴方に幸福があらんことを」


 俺がこの時メイトが言った言葉の意味を理解するのはほんの数時間後の事となる。


誤字や脱字などかありましたら、指摘してもらえるとありがたいです。

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