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リーディングトレーナー

鶴崎は、ハープーンガンでの京都記念3着のあと、フェブラリーステークスで2着、弥生賞で3着と重賞で善戦、競馬界の評価も上がって来ていた。鶴崎は馬を集めてくれるエージェントをつけておらず、自らの評価と腕だけで戦って来ていた。そのため、お得意様は個人馬主や仲のいい厩舎であった。

「鶴崎に、どうしても乗って欲しい馬がいるんだ、頼む」

そう電話をしてきたのは、去年リーディングトレーナーとなった川口鞍之助であった。川口厩舎には、クラブ馬主や大手牧場馬主などのいわばスーパーエリートばかりが集まる。そのため鶴崎の乗ってきた馬たちとは質が違っていた。

「川口先生の馬に乗せていただけるのであれば、喜んでお受けいたします。でも、なぜ自分なのですか?」

鶴崎自信嬉しさの反面なぜ自分なんかにリーディングトレーナーから依頼が来るのか分からずにいた。

「去年の葉牡丹賞で2着だったステラマターっていう牝馬がやっぱりどうしても騎手のゴーサインへの反応が悪くて、周りの騎手に聞いたら、しっかり追ってくれそうなタイプの騎手で君の名前が出てきてね。最近調子もいいし乗せてみようと思って。」

川口から、そう聞かされた鶴崎は何か不思議な気持ちになった。勝つためにはどんなに反応が悪い馬でも切れ味スタミナがあればガシガシ追って勝つそれが鶴崎の騎乗スタイルではあったが、勝つために大逃げや最後方からレースするというギャンブル騎乗もそれなりにあったため、今回の依頼では不安な気持ちが多い。

「わかりました。とりあえず調教乗ってみてどんな感じか、確認しましょう。」

そう伝え、鶴崎は希望と失敗できない不安感を持って調教の日を待った。

次の日のネットに「ステラマター次走鶴崎でスイートピーステークス」と記事になり、ネットではここが鶴崎の運命の分かれ道とまで言われた。

運命の調教の日、川口厩舎に向かいステラマターに乗った鶴崎は、調教を乗って思った。

「この馬なら絶対にオークス勝てる。」

恐ろしく鍛え上げた競走馬としての能力、牝馬で500kgを超える巨体。そして何より負ける気がしないという感覚。

「手が合うと周りが言う事があるがこの馬に関していえば自分の感覚で分かる。絶対に僕はこの馬でオークスを勝ちます。」

川口にそう伝えた、鶴崎の目は不安など感じさせない。

「分かった。今回のスイートピーステークスを勝たないとどっちみちオークスには、向かえない。だから絶対に勝て。そしたら、オークス、秋華賞、有馬記念、この馬の今年を使う予定のレース、全て君に鞍上を任せる。サウスポートクラブには俺が説明する。」

そういった。鶴崎にとって人生が変わるかもしれない大きなチャンス。だが、鶴崎はそんな事は思っていない。この馬に乗れば勝てるその事で頭がいっぱいだった。節目に気付かずレースへ駒を進めた。


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