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『Transients』〜異世界で筋肉無双してモテたい!〜  作者: NewSankin
第一章

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【22-5】気まずい朝と、動き出す歯車

朝の光が、薄いカーテン越しに差し込んでいた。


港町特有の、潮と魚の匂い。

遠くから聞こえる船の汽笛と、人々の話し声。


ポルト・リベルタの朝は、昨夜の喧騒が嘘のように、穏やかだった。


――少なくとも、部屋の中が、そうであればの話だが。


「……」


メルは無言で荷物をまとめていた。

動きはいつも通り冷静、無駄がない。

だが、護の方を一切見ない。


「……?」


護は首をかしげながら、その様子を眺めていた。


「なあ、メル。

 朝から機嫌悪くねぇか?」


「悪くない」


即答だった。


「いや、どう見ても悪――」


「悪くないと言っている!」


ぴしゃり、と空気を切るような声。


護は一瞬たじろぎ、それ以上突っ込むのをやめた。


(……なんだ?

 昨日の夜、何かあったか……?)


だが、心当たりはない。

思い返しても、よく眠った記憶しか残っていなかった。


「……まあ、いいや」


深く考えるのを諦め、護は大きく伸びをする。


「よし!

 とりあえず朝飯だな。腹減った!」


その無神経なまでの通常運転に、

メルは思わず歯噛みした。


(……この脳筋……

 何も覚えていないのか……!)


胸の奥が、もやもやとする。

怒りなのか、恥ずかしさなのか、自分でも分からない。


少し離れた場所で、静かに装備を整えていたカゲロウは、

二人の様子をちらりと見やり――

ほんの一瞬、口元を緩めた。


「……」


だが、その表情はすぐに消え、いつもの無表情に戻る。


「朝食の前に、確認しておくことがある」


淡々とした声で、話題を切り替えた。


「今日の予定だ。

 まずは、ギルド本部に向かう」


「お、そうだったな」


護が頷く。


「マリーナのギルド長が言ってたんだよな。

 総帥グランドマスターが俺に会いたいって」


「……信じがたい話だがな」


メルが小さく呟く。


「それと――」


カゲロウは続けた。


「セラフィーナから預かった紹介状。

 渉外審議長アルドレッドに会う件も忘れるな」


「闇市場、か……」


メルは眉をひそめる。


「この街でそれを扱う以上、

 面倒な連中と関わることになるのは避けられない」


護は腕を組み、少しだけ真面目な顔になった。


「よく分かんねぇけどさ。

 とりあえず、会える奴から会ってみればいいんだろ?」


「……相変わらず大雑把だな」


「でも、そういうとこが取り柄でもある」


メルはそう言いかけて、はっと口を噤んだ。


護が振り返る。


「ん? なんか言ったか?」


「……何でもない!」


ぷい、と顔を背けるメル。


その様子を見て、護はますます首をかしげる。


(……やっぱり、機嫌悪いよな……?)


だが、その理由を考える前に、

部屋の外から街の喧騒が強まっていく。


自由と無法の街、ポルト・リベルタ。

この街には、まだ多くの秘密と、危険と、思惑が渦巻いている。


昨夜は、ただの一夜だったかもしれない。

だが、その一夜は、確かに何かを変え始めていた。


気まずさを抱えたままの朝。

そして、静かに――物語は、再び動き出す。

お読みいただきありがとうございます!


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★更新予定 毎日19時に更新します。ストックはあるつもりなので、安心してお付き合いください。


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