表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『Transients』〜異世界で筋肉無双してモテたい!〜  作者: NewSankin
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/184

【21-2】騎士の報告と、巨悪の足跡

コンコン、と控えめな、しかし芯の通ったノックの音が響いた。 護が「はいよ!」と答えて扉を開けると、そこには騎士の礼装に身を包んだセラフィーナが立っていた。 数日前のやつれた様子はない。その表情は、長く背負っていた重荷を下ろしたように、憑き物が落ちたような晴れやかさを湛えていた。


「お待たせいたしました。フェルディナント公爵への尋問が終わり、一区切りつきましたので、ご報告に上がりました」


彼女は部屋に入ると、三人に深く頭を下げた。


「いいってことよ! おかえり、セラフィーナちゃん! こっち、座ってくれよ。茶くらいしか出せねえけどな」


護が正座を崩して椅子を勧めると、セラフィーナは恐縮しつつも腰を下ろした。メルが淹れたハーブティーの香りが、緊張を少しだけ和らげる。


「で、どうだった? あの公爵、何か吐いたか?」


護が身を乗り出して尋ねると、セラフィーナは真剣な表情で頷き、重い口を開いた。


「はい。フェルディナント公爵は、当初は貴族の特権を盾に黙秘を続けていましたが、メル殿の分析した『薬』の成分データや、あなた方が押収した『闇市場の取引記録』という動かぬ証拠を突きつけると、観念して全てを話し始めました」


王都の裏社会を牛耳っていた大物貴族の失墜。それは、護たちの命がけの行動がもたらした大きな成果だった。


「ですが……肝心なことは、まだ闇の中です」


セラフィーナの表情が曇る。彼女の手が、膝の上で握りしめられた。


「彼は、自身の罪は認めましたが、黒幕である『ドクター・モルゴー』の現在の居場所については、頑として口を割りませんでした。『言えば殺される』『あの御方だけは、わたくしの手には負えん』と、異常なまでの恐怖に震えていました」


「チッ……やはり、尻尾切りか」


カゲロウが不快そうに舌打ちをする。モルゴーという男の用心深さと、底知れぬ恐ろしさが垣間見える。


「しかし、命乞いのためか、一つだけ有益な情報を漏らしました。モルゴーに提供していた『素材』の供給ルートについてです」


「供給ルート?」


「ええ。公爵が闇市場で扱っていた希少な魔物や、人体実験の素材……その多くは、国内ではなく、海を越えて仕入れられていたそうです。そして、そのルートを仕切っているのは、北西の海に位置する海賊たちの自由都市……リベルタリア自由都市同盟の『無法議会』と繋がる、巨大な密輸組織だそうです」


「リベルタリア……?」


護が首を傾げる。聞いたことのない地名だ。 メルが、知識の引き出しを開けて解説した。


「リベルタリア自由都市同盟。ここから北西へ船で数日。複数の都市国家による同盟だが、実態は海賊たちの巣窟だ。そこでは王国の法律など通用しない。個人の『実力』と『富』だけが絶対的な価値を持つ。海賊が貴族のように振る舞い、商人が法を作る……まさに無法者たちの楽園さ」


メルはテーブルに地図を広げ、指でなぞる。


「そして何より皮肉なのは、その中心都市であるポルト・リベルタには、我々が所属する『ワールド・ギルド・ユニオン』の本部もあるということだ。世界のルールを作る場所のすぐ隣で、ルールを無視する者たちが最大の経済圏を築いている……実に、矛盾に満ちた場所だな」


「へぇ~! 海賊に、ギルドの本部か! なんかワクワクしてきたぞ! デカい船とかあんのかな!」


護は難しい政治の話は右から左へ流し、「海賊」という響きに少年のように目を輝かせている。 カゲロウが腕を組み、低い声で呟いた。


「『灯台下暗し』、か。あるいは、ギルド上層部にも、奴らと通じている者がいるのかもしれんな」


その言葉が、その場の空気をピリリと引き締める。 敵はモルゴーだけではないかもしれない。世界を統べる組織の闇にも、触れることになるかもしれないのだ。


「……決まりだな」


護がパンと手を叩き、立ち上がった。その瞳には、新たな冒険への期待と、悪を許さない強い意志が宿っていた。


「次の目的地は、リベルタリアだ! その密輸組織ってのを叩けば、モルゴーの尻尾も掴めるはずだ! それに、海賊の街なんて、面白そうじゃねえか!」


「ああ。それに、ギルド本部があるなら、総帥グランドマスターに会うという当初の目的も果たせる。一石二鳥だね」


メルも同意し、カゲロウも無言で頷く。 王都での戦いを終えた彼らの次なる舞台は、海風と欲望が渦巻く、自由と混沌の都市に決まった。

お読みいただきありがとうございます!


もし「面白そう!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、 ページ下の【☆】マークから評価や、ブックマーク登録をしていただけると、作者のモチベーションがマッハで上がります! (感想もお待ちしています!)


★更新予定 毎日19時に更新します。ストックはあるつもりなので、安心してお付き合いください。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ