表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『Transients』〜異世界で筋肉無双してモテたい!〜  作者: NewSankin
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

88/187

【20-5】ひまわりの食卓

「ばあちゃん! 冒険者の、でっかい人が来たよ!」


獣人の少年レオの声で、孤児院『ひまわりの家』の古びた扉が開いた。 出てきたのは、小柄だが背筋の伸びた老婆、院長のマーサだった。白髪をきっちりと結い上げ、質素な修道服に身を包んでいる。 彼女は最初、護の巨体を見て子供たちを庇うように身構えたが、彼らが笑顔で護の手を引いているのを見て、すぐに柔和な表情を浮かべた。


「おやまあ……。お客様かい? それに、その大きな荷物は……」


「俺は磐座 護! ギルドから薬草採取の依頼を受けてきたんだ! ついでに、晩飯の材料も現地調達してきたぜ!」


護が背後に引きずっていた巨大なフォレストボア(森猪)をドスンと下ろすと、マーサは目を丸くして絶句した。


「ま、まさか……本当に来てくださるとは。あの依頼は報酬も出せないものですのに……」

「そんなことはいいんだ。それより腹減ったろ? キッチン借りるぜ! みんなで美味いもん食おう!」


護は遠慮するマーサを押し切り、子供たちを引き連れてキッチンへと雪崩れ込んだ。 エプロン(サイズが合わず前掛け状態)をつけた護が、指揮を執る。


「よし、お前ら! 手伝え! レオは野菜を洗ってくれ! アンナは皿の用意だ!」

「はーい!」


護は手際よく猪を解体していく。血抜きをし、持参した薬草や香辛料で臭みを消す。固い部位はミンチにし、骨からは濃厚な出汁を取る。 ただの力任せではない。食材への敬意と、食べる人への愛情がこもったプロの料理人の手つきだ。


「お兄ちゃん、すごーい!」

「色んな料理店でバイトしてたからな!こんぐらい朝飯前よ!」


やがて、『ひまわりの家』には久しぶりに、肉の焼ける香ばしい匂いと、スパイスの食欲をそそる香りが充満した。 食堂のテーブルには、大皿料理が所狭しと並べられる。 猪肉の香草焼き、根菜たっぷりの猪汁、そして肉の脂で炒めた特製チャーハン。さらには即席のデザートまで。


「いっただきまーす!」


子供たちの元気な声が響く。久しぶりのご馳走に、みんな夢中でかぶりついた。


「んん~っ! お兄ちゃん、これ、すっごく美味しい!」

「お肉やわらかい! 肉汁がじゅわってする!」


「おうおう、たくさん食えよ! おかわりもあるからな!」


護は、口の周りをソースだらけにして笑う子供たちの姿を、心から嬉しそうに眺めていた。その光景は、記憶の中にある故郷の施設での食事風景と重なる。騒がしくて、温かくて、何よりも安心できる場所。 マーサも、久しぶりに見る子供たちの満腹そうな顔に、涙ぐみながらスプーンを運んでいる。


食事が終わり、子供たちが満足して寝静まった後。 静まり返った食堂で、護はマーサから孤児院の事情を聞いていた。


「……実は、この孤児院には、身に覚えのない多額の借金がかけられているのです」


マーサは重い口を開いた。


「先日、役人を名乗る男たちが来て、この土地の権利書が書き換えられたと言い出しました。元々ここは王家の直轄地だったはずなのですが……彼らは『フェルディナント公爵閣下の都市開発計画』のためだと言って、法外な立ち退き料か、借用書へのサインを迫ってきたのです」


「公爵……?」


護の眉がピクリと動く。またあの名前か。


「ええ。抵抗しましたが、彼らは子供たちを人質に取り……泣く泣くサインをしてしまいました。ですが、彼らの狙いは金ではないのです。最初から、子供たちを……『商品』として確保することが目的だったのです」


マーサの声が震える。 公爵、開発計画、そして子供たち。 点と点が繋がる。これは借金取り立てなどではない。公爵が裏で糸を引いていた、闇市場への供給ルートの一つなのだ。 あの地下室で見た、鎖に繋がれた子供たちの姿が、護の脳裏をよぎる。


「……許せねえ」


護の声が低く唸るように響いた。 かつての自分と同じような子供たちを、物のように扱おうとする外道ども。絶対に許しておくわけにはいかない。


「ばあちゃん、安心しな。今日はここに泊めてくれ。俺がついてる」

お読みいただきありがとうございます!


もし「面白そう!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、 ページ下の【☆】マークから評価や、ブックマーク登録をしていただけると、作者のモチベーションがマッハで上がります! (感想もお待ちしています!)


★更新予定 毎日19時に更新します。ストックはあるつもりなので、安心してお付き合いください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ