【19-5】もう一人の英雄
一方、その頃。 マギア共和国とは遠く離れた、自然豊かなシルヴァニア連合王国。 清らかな空気に満ちた湖畔の宿屋で、一組の冒険者たちが朝食をとっていた。
世界を救う旅を続ける、聖剣に選ばれし勇者、アレス・ウォーカーとその仲間たちである。
「ねえ、これ見てよ、アレス!」
天才魔導師セレスティアが、興奮した様子で朝刊を広げた。
「『悪徳公爵、冒険者の手により断罪! 王都に新たな英雄、現る!』ですって! エルドラドの王都で、大きなクーデター未遂があったみたいよ」
「へぇー! 公爵を捕まえちまうなんて、どんな奴らなんだろ! 『クラッシャー』だって! 強そう!」
獣人族の格闘家レオナが目を輝かせ、肉を頬張りながら叫ぶ。 聖女ルナリアも、穏やかに微笑みながら相槌を打つ。
「素晴らしい方々ですね。名誉や地位ではなく、正義のために戦うなんて」
「ふふ、私たちもうかうかしていられないわね」
エルフの弓使いシルヴィアが、冷静に紅茶を啜る。
アレスは、仲間たちの会話を聞きながら、記事に目を通した。 そこには、多少誇張された筆致で、一人の男の姿が描かれていた。 山のような巨躯で全ての悪意を受け止め、戦斧の一撃で大地を割り、仲間を守るために傷つくことを厭わない男。
「……ふふっ」
アレスは、思わず笑みをこぼした。 その瞳には、一点の曇りもない。
「どうしたの、アレス?」
「いや……。なんだか、すごい奴がいたもんだな、と思ってさ」
嫉妬も対抗心もない。あるのは、同じように誰かを守るために戦う者への、純粋な親近感と敬意。そして、自分とは違う強さを持つ存在への好奇心。
「いつか、会ってみたいな」
アレスは、窓の外に広がる青空を見上げた。その視線の先は、遥か遠く、王都の方角へと向けられていた。
「その、『英雄』に」
世界の中心で輝く「光」の勇者と、世界の片隅で産声を上げた「力」の英雄。 二つの太陽が、まだ交わることのない空の下で、同じように輝き始めていた。 物語は、王都を離れ、新たな舞台へと進んでいく。
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