【19-4】悪意の胎動
その頃。 マギア共和国、某所。 無機質な金属と冷たい薬品の匂いが充満する研究室で、一人の男がモニターを見つめていた。 白衣を纏った痩身の男、ドクター・モルゴー。 壁に投影された魔法映像には、通信してくるバロン・ガイツの青ざめた顔が映っている。
『も、申し訳ありません、モルゴー博士……! 計画は、失敗です……! 公爵閣下は逮捕され、研究所も……!』
「失敗? ああ、君が捕まらなかっただけ、上出来じゃないか」
モルゴーは、手元のコンソールを操作し、巨大な培養槽の中のデータを調整しながら、淡々と答えた。 彼にとって、公爵もガイツも、ただの資金源であり、使い捨ての駒に過ぎない。計画の遅れなど、誤差の範囲だ。
「私が知りたいのは、ただ一つだ」
モルゴーは振り返り、眼鏡の奥にある爬虫類のような冷たい瞳を細めた。
「私の可愛いキメラを破壊し、公爵の最高傑作であるアーサーを打ち破ったという、その新人……磐座 護。彼は、どうだったかね?」
『ば、化物です! あれは、人間ではない! 聖剣の力でも、魔法でもない……。ただ、己の肉体だけで、全てを粉砕する……!』
ガイツの恐怖に満ちた報告を聞き、モルゴーの口元が三日月のように歪んだ。
「素晴らしい……!」
恍惚とした声。 彼は、狂気的な笑みを浮かべ、自らの理論を語りだした。
「勇者アレスは、聖剣に選ばれた『正規のヒーロー』だ。いわば、世界のシステムが用意した抗体だ。だが、磐座 護は違う。彼は、世界の理から外れた『バグ』、予測不能な『突然変異体』だ!」
モルゴーは、部屋の中央に鎮座する巨大なカプセルへと歩み寄る。 その中では、護たちが倒したはずのキメラの細胞を培養し、さらに強化・改造を施した、おぞましい肉塊が脈動していた。
「魔力を持たず、純粋な生命エネルギーのみで魔物を凌駕する肉体……。私の探究心を、これほどまでに刺激する存在は初めてだよ。彼こそが、私の研究を完成させるための『最後のピース』になるかもしれない」
モルゴーは、カゲロウのように愛おしげにカプセルを撫でた。
「待っているよ、磐座 護。君という最高のサンプルが、私の元へ来る日をね……! この『キメラ・プライム』の糧となる日を!」
狂気のマッドサイエンティストは、新たな実験材料の登場に、子供のように目を輝かせていた。
お読みいただきありがとうございます!
もし「面白そう!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、 ページ下の【☆】マークから評価や、ブックマーク登録をしていただけると、作者のモチベーションがマッハで上がります! (感想もお待ちしています!)
★更新予定 毎日19時に更新します。ストックはあるつもりなので、安心してお付き合いください。




