【19-2】最期の言葉
静寂が戻った地下室。 騎士たちが事後処理に動く中、セラフィーナは、床に倒れ伏すアーサーの元へと駆け寄った。 彼の体は、足元から徐々に光の粒子となって崩れ始めている。完全に消滅するまで、もう時間がない。 彼女は震える手で、変わり果てた先輩騎士の上半身を優しく抱きかかえた。
「先輩……っ!」
「ごめんなさい……。わたくしが、もっと強ければ……もっと早く、あなたの苦しみに気づいていれば……!」
彼女の瞳から、大粒の涙がこぼれ落ち、アーサーの鉄仮面のような頬を濡らす。 その時。
「……セラ……泣く、な……」
かすれた、しかし聞き覚えのある優しい声。 アーサーの虚ろだった瞳に、一瞬だけ、かつての理性の光が戻っていた。魔石の呪縛が解け、魂が還る最期の瞬き。
「アーサー先輩!?」
「「「!?」」」
全員が息をのむ。
「……意識は、朧げに、だが……あった……。公爵を、止められず……すまなかった……。だが、最後に……君に会えて、よかった……」
彼は、震える手でセラフィーナの頬に触れようとし、その手は光となって空を掴んだ。 そして、視線をゆっくりと動かし、彼女の後ろに立つ護を見つめた。
「お前……名は……」
「……護だ」
「護、殿……。強い、な……」
アーサーは、満足げに目を細めた。
「セラを……そして、民を……その、力で……守って、くれ……」
それは、一人の英雄から、もう一人の英雄への、「意志」の継承だった。 護は、真剣な眼差しで頷いた。
「ああ。……任せておけ。アンタの分まで、俺が守る」
「……頼ん、だ……」
アーサーは、最後に本当に穏やかな笑顔を浮かべた。 五年前のあの日、炎の中で子供たちに向けたものと同じ、屈託のない笑顔を。 そして、彼の体は完全に光の粒子となり、天へと昇るように消えていった。
残されたのは、一振りの折れた剣と、静かな涙だけだった。
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