【43-3】光と影の研究所
三日後。
首都マギカは『大博覧会』の熱気に包まれていた。
空には色とりどりの魔法花火が打ち上がり、メインストリートは最新魔導具のデモンストレーションに沸く群衆で溢れかえっている。
その喧騒の裏側。旧市街の薄暗い路地裏に、三つの影があった。
「うへぇ、こっちはカビ臭せぇな……。表とは大違いだ」
作業員風のボロ布をまとった護が、鼻をつまんで顔をしかめる。
「静かに。巡回が来るぞ」
同じく変装したカゲロウが鋭く警告し、一行は物陰に身を潜めた。
機械人形の警備兵が、規則的な駆動音を立てて通り過ぎていく。
彼らが目指したのは、塔の裏手に位置する廃棄物搬入口。
頑丈な魔導ロックが掛かった扉の前で、メルが道具袋から奇妙な形状の工具を取り出した。
「最新式の『多重魔力認証錠』か……。ふん、構造が甘いな」
メルは工具を鍵穴に差し込むと、微弱な魔力波を流し込みながら繊細に指を動かす。
カチッ、と小さな音が鳴り、重厚な扉が音もなく開いた。
「へえ! すげぇな、メル! 魔法の鍵開けもできるのか!」
「ボクを誰だと思っている。これくらい、朝飯前だ」
得意げに鼻を鳴らすメルだが、その表情はすぐに引き締まった。
「ここから先は、モルゴーの領域だ。何が出てきてもおかしくない。……行くぞ」
地下へと続く螺旋階段を降りるにつれ、空気は冷たく、淀んだものへと変わっていった。
鼻をつくのは、薬品の刺激臭と、鉄錆のような血の匂い。
そして耳障りなのは、低い唸り声のような機械の駆動音。
「……嫌な気配だ。トルトゥーガの地下牢より、もっとタチが悪い」
護が全身の毛を逆立て、忌々しげに呟く。彼の野生の勘が、この先にある「何か」を全力で拒絶していた。
最深部。
巨大な鉄扉を押し開けた先には、ドーム状の広大な空間が広がっていた。
壁一面に並ぶ培養槽。中には、異形の生物たちがホルマリン漬けにされている。
だが、それら以上に目を引いたのは、部屋の中央に鎮座する禍々しいオブジェだった。
高さ10メートルほどの黒水晶のオベリスク。
その内部では、赤黒い光が脈動し、ドクン、ドクンと心臓のような音を立てている。
「な、なんだあれ……? 見てるだけで、寒気がしてきやがる……」
護が一歩後ずさる。
メルはそのオベリスクに近づき、目を見開いて戦慄した。
水晶の表面に、無数の「人間の顔」が浮かんでは消えているのが見えたからだ。
苦悶、恐怖、絶望。
音なき叫びが、視覚を通じて脳に突き刺さる。
「これは……ただの魔力増幅器じゃない……!」
メルの声が震えた。
「『魂の牢獄』……!
生きた人間の魂を強引に引き剥がし、燃料として燃やし続ける、禁断の錬金術だ……!
モルゴーの奴、まさか『賢者の石』を人工的に造ろうとしているのか!?」
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