【42-1】癒しの光と、厚き壁
嵐の夜が明け、マギア共和国の首都マギカに穏やかな朝が訪れていた。
窓から差し込む柔らかな日差しの中、メルの膝の上で、小さな毛玉がすやすやと寝息を立てている。
月光石の獣。
昨夜までは死の淵を彷徨っていたその体は、夜光花の蜜によって劇的な回復を遂げていた。
白銀の毛並みは本来の艶を取り戻し、額の月光石もまた、呼吸に合わせて穏やかなリズムで明滅している。
「……よかった。本当によかった……」
メルは、その小さな温もりを壊さないように優しく撫でながら、心からの安堵を吐息と共に漏らした。
その光景を、包帯だらけの護とカゲロウが、部屋の隅から温かい目で見守っている。
命を懸けた価値はあった。
この穏やかな寝顔こそが、彼らにとって何よりの報酬だった。
しかし、安らぎの時間は長くは続かない。
場所を移し、セオドアの書斎。
テーブルに広げられたマギア共和国の詳細地図を前に、一行の表情は険しかった。
「もぉ〜! ガッチガチじゃねぇか! どうやって突破したもんかな? やっぱ正面突破かぁ?」
護が苛立たしげにテーブルを叩く。
彼が指差した先――ドクター・モルゴーのアジトとされる『賢者の塔跡地』は、絶望的な立地にあった。
周囲を軍事施設や最新鋭の魔法研究所に囲まれ、上空には常時監視用の使い魔が旋回している。
まさに要塞の中の要塞だ。
「正面突破は不可能だ。物理的な障壁だけならまだしも、ここには『政治』という見えない壁がある」
カゲロウが腕を組み、静かに指摘する。
セオドアも重々しく頷いた。
「うむ。賢者の円卓……共和国の最高意思決定機関には、モルゴーの息がかかった者が少なからずいる。
彼らが警備部隊を私兵のように動かしているのだ。
我々が証拠もなく動けば、即座に『国家反逆者』として認定され、国全体を敵に回すことになる」
個人の武力ではどうにもならない、組織と権力の壁。
護たちは、あと一歩のところで完全に手詰まりとなっていた。
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