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『Transients』〜異世界で筋肉無双してモテたい!〜  作者: NewSankin
第一章

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【41-2】帰還と、賢者の涙と、繋がる命

東の空が白み始めた頃。  

セオドア侯爵は、屋敷の玄関で信じられない光景を目にしていた。  

庭には、ぐるぐる巻きに拘束された悪名高き『享楽のザギ』が転がっている。

そして門の向こうからは、泥と血にまみれた二人の男が、互いに肩を貸し合いながら歩いてくるのが見えた。


特に護の姿は異様だった。  

背中には巨大な戦斧に加え、見たこともないほど巨大な魔獣の角を担いでいるのだ。


「まさか……本当に……」  


セオドアは震える手で口元を覆った。  

暗殺者を捕縛し、禁足地である『死を呼ぶ森』の主を討ち取って生還した。  

常識では測れない。彼らは、本物の怪物であり、英雄だった。


治療室から飛び出してきたメルは、二人の姿を見て息を呑んだ。


「護! カゲロウ!」  


想像を絶する傷の数々。

立っているのが奇跡のような状態だ。  

メルが駆け寄ろうとすると、護が制止するように手を上げた。  

そして、懐からボロボロになった袋を取り出し、そっとメルに差し出す。


「よう、メル……。約束、守ったぜ。これで……あいつを、治してやんな」


袋の中には、淡く、しかし力強い光を放つ『夜光花』が束になって入っていた。  

護の顔は血と泥でぐちゃぐちゃだったが、その瞳は優しく、どこまでも温かかった。


「……っ!」  


メルは言葉にならなかった。  

ただの依頼ではない。

ただの同情でもない。  

命を懸けて、約束を守り抜く。

それがどれほど重く、尊いことか。  

メルは溢れそうになる涙をぐっと堪え、震える手で袋を受け取った。


「……任せろ。この命、絶対に繋いでみせる」  


メルの力強い返事を聞くと、護は「へへっ」と満足そうに笑い、


「あとは……頼む……」  


糸が切れたように、その巨体をカゲロウに預けて寝てしまった。  

ガゴン、と背負っていた巨大な角が地面に落ち、重い音を立てた。


朝日が差し込む治療室。  

メルは夜光花から抽出した蜜を、慎重にカーバンクルの口へと流し込んだ。  

美しい青色の液体が飲み込まれると同時に、カーバンクルの体が淡い光に包まれる。  

こわばっていた筋肉が弛緩し、浅かった呼吸が深く、力強いものへと変わっていく。  


そして。


「キュウゥ……」  


カーバンクルがゆっくりと目を開けた。その瞳には、はっきりとした理知の光が戻っていた。


「やった……! 成功だ……!」  


メルはその場にへたり込み、安堵のため息を漏らした。


一部始終を見ていたセオドアは、眼鏡を外し、目頭を押さえた。


「素晴らしい……。君たちの勇気と技術が、奇跡を起こしたのだな」  


彼は深く頭を下げた。


「礼を言う。君たちに出会えて、本当によかった」


メルは窓の外、護とカゲロウが眠る部屋の方角を見つめ、静かに微笑んだ。


「お礼なら、あの無茶ばかりする馬鹿な英雄たちに言ってやってくれ。

ボクはただ、彼らが繋いだバトンを受け取っただけです」


カーバンクルがよろよろと立ち上がり、メルの頬にすり寄る。  

その温もりを感じながら、メルは心の中で誓った。  

彼らが命懸けで守ったこの光を、今度は自分が守り抜くのだと。

お読みいただきありがとうございます!


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★更新予定 毎日19時に更新します。ストックはあるつもりなので、安心してお付き合いください。

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