【40-1】死の森の包囲網
『死を呼ぶ森』の最深部。月光が降り注ぐ泉の周囲は、怒号と衝撃音の嵐に包まれていた。
護は、四方を囲む「壁」と対峙していた。
それは、ただの壁ではない。体長3メートルを超える巨体、鋼のように硬化した体毛、
そして額から突き出た鋭利な角を持つ魔獣――『月輪熊』の群れだ。
「ちっ、数が多すぎる……! それにこいつら、ただの獣じゃねえぞ!」
護が戦斧を振り回し、正面の一頭を吹き飛ばす。
だが、その隙を狙って、背後から別の個体が無音で襲いかかってきた。
鋭い爪が護の背中を裂こうと迫る。
護は本能的な勘で身を沈め、回し蹴りで迎撃するが、熊たちは驚くべき連携を見せた。
一頭が攻撃を受け止めている間に、左右から二頭が同時に飛びかかってくるのだ。
(まるで訓練された兵隊だ。誰かが統率してやがるのか……?)
護は舌打ちをする。
『闘気』で強化された肉体とはいえ、これだけの数の重量級モンスターに波状攻撃を仕掛けられては、スタミナが削られる一方だ。
すでに護の学ランと装備はあちこちが裂け、うっすらと赤い血が滲んでいる。
焦りが、護の呼吸をわずかに乱れさせていた。
「くそっ……! キリがねえ! 雑魚にかまってる時間はねえんだよ! 早く、あの親玉を叩かねえと……!」
護の視線の先には、悠然と佇む『古月の主』がいる。
護は咆哮し、捨て身の突進を敢行した。
「どけえぇぇぇッ!!」
真正面の三頭を、戦斧の側面でまとめて薙ぎ払う。
強引にこじ開けた突破口。
主への道が開いた――そう思った、その瞬間だった。
ゴオオオオオッ!!
大気が爆ぜるような轟音が響いた。
それまで彫像のように静観していた『古月の主』が、巨体からは想像もつかない速度で動いたのだ。
ただの腕の一振りではない。全身のバネと体重を乗せた、渾身のラリアット。
それは、護の視界を黒い壁で覆い尽くした。
「がはっ……!?」
防御の姿勢を取る暇すらなかった。
凄まじい衝撃が脇腹に突き刺さる。
内臓が位置を変え、骨がきしむ嫌な音が体内で響いた。
護の巨体は、まるでボールのように軽々と弾き飛ばされた。
ドガガガガガッ!
数本の巨木をへし折り、岩盤を削りながら地面を転がり、ようやく止まる。
「ぐ、うぅ……!」
口から赤黒い血がごぼりと溢れた。
視界が明滅し、手足の感覚が遠のく。
薄れゆく意識の中で、護はゆっくりと歩み寄ってくる『古月の主』の姿を見た。
その瞳に慈悲はない。
あるのは、侵入者を排除するという冷徹な殺意だけだった。
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