【37-2】カゲロウ VS ゼーロス:歪んだ忠誠心と無音の刃
ダンジョンの最奥。カレイドゴーレムを倒し、一息ついていた一行の前に、二人の魔族が姿を現した。
「貴様ら、何者だ! それに、どうやってここへ……! 衛兵たちはどうした!」
リチャードが、怒りに声を震わせる。
「ああ、入り口にいたゴミのことか? うるさかったから、掃除しておいた」
ゼーロスが、虫けらを払うように言う。
「な……なんだと……!」
リチャードが激昂するのを、カゲロウが制止した。
その時、ゼーロスは護の姿を見ると、その表情を嫉妬と憎悪に歪ませた。
「……ほう。貴様が、磐座護だな?」
「そうだ。なんで、俺の名を……」
「ヴァルガス様から、貴様の話は聞いている!
あの御方が、たかが人間風情に、あそこまで興味を示されるとは……!
許せん! ボーロ、任務変更だ! 今ここで、こいつを殺す!」
「へいへい……。はぁ、面倒なこった……」
ゼーロスは毒の塗られた紫色のダガーを二本抜き放ち、ボーロは身の丈ほどもある巨大な戦斧を構え、襲いかかってきた。
ゼーロスが姿を消した。
否、速すぎるのだ。
人間の動体視力を遥かに超える神速の踏み込み。
カキンッ!!
カゲロウが本能で刀を掲げた場所に、火花が散った。
「ほう、一度目は防いだか。だが、いつまで持つかな?」
ゼーロスの姿がブレる。
前後、左右、頭上。全方位から、毒の刃が雨あられと降り注ぐ。
カゲロウは冷や汗を流しながら、その全てを紙一重で弾き続けた。
「なぜ、護を狙う?」
斬り結びながらの問いに、ゼーロスは狂気を帯びた瞳で見開いて叫んだ。
「黙れ! 貴様のような下等生物に、ヴァルガス様への、この俺の忠誠心が分かるものか!
あの御方が、あんなにも楽しそうに、人間の話をするなど……! 俺は、見たことがなかった!」
ゼーロスの攻撃速度が、感情の高ぶりと共にさらに加速する。
「それが、勇者でもない、ただの冒険者だと!? 許せるものか!
たとえ、この命に代えても、ヴァルガス様の『興味』を汚す、貴様等のようなゴミは、ここで排除する!」
キィン!
ガギンッ!
シュッ!
カゲロウの頬を、切っ先が掠める。
その瞬間、焼き付くような熱さが傷口から走った。
猛毒だ。
「くっ……!」
視界が歪む。
手足の感覚が遠のいていく。
徐々に剣速が鈍るカゲロウを見て、ゼーロスが嗜虐的な笑みを浮かべた。
「どうした、剣士! もう終わりか!? 毒が回ってきたようだな! 所詮、人間の剣など、この程度よ!」
(意識が……飛びそうだ……)
朦朧とする意識の中、カゲロウの脳裏に、護の屈託のない笑顔や、メルの心配そうな顔が浮かぶ。
かつて仲間を見捨てて生き延びた、あの日の後悔。
(ここで、倒れるわけには……いかない……!)
カゲロウは、震える足を踏ん張り、深く息を吸い込んだ。
思考を加速させ、毒によるノイズを意志の力で遮断する。
彼が静かに刀を鞘に納め、居合の構えを取ると、周囲の空気が凍りついたように静まり返った。
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