【36-1】ダンジョンへの道と、迫る影
ウィンズレイ侯爵家の豪華な馬車が、リベルタの石畳を滑るように進んでいく。
護、カゲロウ、メルの三人は、当主であるリチャード侯爵と向かい合って座り、
目的地である『色彩の地下回廊』についての説明を受けていた。
「皆様、昨夜はよくお休みになれましたかな?」
リチャードが、穏やかな笑みで問いかける。
「おう、おっちゃん! ふかふかのベッドで、ぐっすりだったぜ!」
「ボクは、まあまあだな。それより、これから向かうダンジョンについて、もっと詳しく聞かせてください」
メルが、早速本題に入る。
「うむ」
リチャード侯爵が頷き、説明を始めた。
「『色彩の地下回廊』は、元々は数百年前にこの地で活躍した、一人の偉大な芸術家が築いた、巨大なアトリエ兼霊廟だったと伝えられています。
内部は、彼が生涯をかけて集めたという魔法の顔料や鉱石で彩られ、訪れる者の心を癒す、
美しい場所でした。ギルドの管理ダンジョンとしても、その危険度は低く、
新人冒険者たちの訓練場としても利用されていたのです。……しかし」
リチャードの表情が、憂いを帯びて曇る。
「ここ数週間で、内部の様子が一変してしまいました。調査に向かったギルドの報告では、
これまで見たこともない、壁の絵の具が命を持ったかのような、異形なモンスターが出没している、と……。
まるで、ダンジョンそのものが、何か別のものに書き換えられてしまったかのように……」
「モルゴー……」
メルが、誰にも聞こえないほどの声で呟く。
その手は、護からもらったボールペンを、固く握りしめていた。
「侯爵閣下、その異変が起き始めたのは、いつ頃からか、お分かりになりますか?」
カゲロウが、静かに問う。
「……はっきりと分かっているのは、三週間前から。
ちょうど、王都で闇市場が活発化した時期と、重なります」
その言葉に、メルとカゲロウの表情が、さらに険しくなった。全ての点が、一つの邪悪な存在へと繋がっていく。
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