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『Transients』〜異世界で筋肉無双してモテたい!〜  作者: NewSankin
第一章

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【35-3】賢母の慧眼と、夢

晩餐会後の、屋敷のテラス。 メルは、一人、夜風に当たっていた。

そこへ、アリアの母親、エレノアが、そっと近づいてきた。


「少しだけ、よろしいかしら? メルさん。護さんのことで、お話が……」


「……なんだい?」


「単刀直入にお聞きします。護さんは、異世界の方なのではなくて?」


メルの心臓が、大きく跳ねた。

メルは必死で動揺を隠すが、エレノアの穏やかで、しかし全てを見透かすような瞳の前では、無駄だった。


「……なぜ、それをボクに? 本人に聞けばいいだろう」


「うふふ。護さんに聞いたら、『おう、そうだけど、なんで分かったんだ?』と、

すぐに答えてくださるでしょう? それでは、面白くありませんもの」


その、悪戯っぽい笑みに、メルは、この女性が一筋縄ではいかないことを悟る。

メルが「知らない」と答えても、エレノアは、自らの推論を語り始めた。

彼女が、王家の血を僅かに引くこと。勇者の伝説に精通した、歴史マニアであること。

そして、護の持つ、この世界の理から外れた雰囲気と、初代勇者の逸話との共通点……。


「……それを知って、どうするつもりだ? 彼を、研究材料にでもするのかい?」


「いいえ。違いますわ。『支援』させていただきたいのです」


エレノアの瞳が、商人のように、鋭く光った。


「護さんは、いずれ必ず、歴史に名を残す英雄になります。わたくしには、分かります。

 そして、その英雄の伝説の最初のページに、『ウィンズレイ家、これを支援す』と記されること。

 それは、商人として、そして、歴史を愛する者として、最高の栄誉ですのよ」


それは、感謝の念と、そして、未来への、したたかで、壮大な「投資」の申し出だった。


「……護が、英雄になるかどうかは、さておき。その支援、謹んで受けさせてもらおう。

 資金は、いくらあっても足りないからな」


二人の間には、奇妙な関係が生まれた。


その夜。


メルは、生まれて初めて眠る、天蓋付きの豪華なベッドの中で、今日の出来事を反芻していた。


(全く、とんでもない親子だ……。だが、これで、当面の資金の心配はなくなったな……)


彼女の脳裏に、ギルド本部で、総帥エイブラハムが言った言葉が蘇る。


『そして、初代勇者は、その旅の道中で出会った、一人の賢者の女性と結ばれた』


その時、総帥が、自分を一瞥した、あの意味ありげな視線。


(まさか……な……)


護の、太陽のような笑顔を思い出す。


(あの脳筋が、勇者……? ありえない。ありえないが……)


メルの顔が、熱を持ったように、赤く染まっていく。


(……もし、万が一、そうなのだとしたら、その隣にいる『賢者』は……)


彼女は、布団を頭まで被ると、高鳴る心臓を抑えつけながら、甘く、そして、少しだけ現実味を帯びてきた、淡い夢の中へと、落ちていった。

お読みいただきありがとうございます!


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★更新予定 毎日19時に更新します。ストックはあるつもりなので、安心してお付き合いください。

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