【35-1】帰港
ポルト・リベルタの港に停泊する、一行の船『最強!スーパーガーディアンズ号』。
その船上では、和やかな晩餐会が終わり、今後の進路についての話し合いが行われていた。
「僕が覚えている限り、手に入れていた帳簿によれば、
モルゴーのアジトは、マギア共和国の『賢者の塔跡地』で間違いないだろう。
だが、今のボクたちの状態で、すぐに乗り込むのは無謀だ。
ヴァルガスのような化け物が、他にもいないとは限らない」
メルの冷静な分析に、護も頷く。
「そうだな。それに、まずは、アリアちゃんを、ちゃんと家まで送り届けてやんねえとな!」
護の言葉に、船員たちや子供たちも「それがいい!」「アリア様を無事に!」と口々に賛同する。
アリアは、皆が自分のことを第一に考えてくれたことに、胸を熱くした。
「皆さん、ありがとうございます……。ですが、船員の皆さんや、子供たちは……」
アリアが懸念を示すと、護はポンと手を叩いて明るく言った。
「だったら、アリアちゃんの実家で雇ってもらうってのはどうだ?
デカくて立派な屋敷なんだろ?
ギデオンたちは腕の立つ働き者だし、きっと屋敷の役にも立つはずだぜ!」
護のあまりにも稚拙かつポジティブな発想に、メルとアリアは呆れつつも、それが現時点での最善策であることは、誰もが理解していた。
侯爵家ならば、彼らを受け入れるだけの度量も仕事もあるだろう。
アリアは、船員たちと子供たちに、従業員として正式に雇い入れることを約束する。
目的地は、アリアの故郷、エルドラド王国の芸術と貿易の港町リベルタ。
船は、新たな希望を乗せて、再び帆を上げた。
数日後。
一行は、芸術都市リベルタに到着した。
そこは、マリーナの活気とも、王都アウロラの荘厳さとも違う、
自由で、華やかな空気に満ちた美しい港町だった。
アリアの案内で、一行は丘の上に立つ、巨大な屋敷の前に立つ。
ウィンズレイ侯爵家の壮麗な屋敷だ。
アリアが、震える手で重厚な扉をノックする。
やがて、扉がゆっくりと開かれ、やつれてはいるが、気品を失っていないアリアの両親、リチャードとエレノアが姿を現した。
「まあ……! あなたは……!」
「お父様! お母様! ただいま、戻りました……!」
アリアは、両親の胸に飛び込み、声を上げて泣いた。
「アリア……! 本当に、アリアなのですね……! ああ、夢では……夢ではないのですね……!」
母親のエレノアも、娘を固く抱きしめ、涙を流す。
父親のリチャードは、ただ、言葉もなく、愛娘の頭を何度も撫でていた。
応接間に通された一行。
アリアは、護たちが、自分を絶望の淵から救ってくれた、命の恩人であることを両親に語った。
リチャードは、護たちの前に深く頭を下げた。
「皆様には、何とお礼を申し上げればよいか……。
このご恩は、ウィンズレイ家の全てをかけて、必ずやお返しいたします」
母親のエレノアは、護の姿を一目見た瞬間から、まるで伝説上の人物でも見るかのように、驚きと、強い興味が入り混じった瞳で彼を見つめている。
リチャードが、金貨が山のように詰まった革袋を差し出すが、護はそれを、優しく、しかし毅然とした態度で押し返した。
「いや……金は受け取れねえよ、おっちゃん。俺たちは冒険者として、当たり前のことをしただけだ」
護はそこで一度言葉を切り、真剣な眼差しでリチャードを見据えた。
「……けど、もし本当に礼をしてくれるってなら、一つだけ、一生の頼みを聞いてほしい。
俺たちが連れてきた船員や子供たち……あいつらを、おっちゃんのところで雇ってやってくれねえか?
あいつらは、一度は生きる場所を奪われた連中だ。
だから……あいつらに、胸を張って生きられる場所をやってほしいんだ。
……頼む。それが、俺たちへの一番の報酬だ」
護はそう言って、深々と頭を下げた。
その言葉に、リチャードとエレノアは、目の前の若者の姿が、建国神話に伝わる英雄の姿と重なって見えた。
「素晴らしい……! なんと気高いお方だ!
……アリア、お前も、そうは思わないかね?
このような素晴らしい殿方を、生涯の伴侶として……」
「ゴホンッ! ……お父様、お客様方が、長旅でお疲れですわ」
アリアが、わざとらしく大きな咳払いで、父親の暴走を止めた。
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