【34-3】絆のレシピと帰還
船の応接室で、メルとアリアは二人きりで今後の航路や、手に入れた資金の運用計画を練っていた。
アリアの的確な仕事ぶりに、メルは「君、なかなか有能だな」と素直に感心していた。
作業の合間、メルはどこか落ち着かない様子で、窓の外を眺めている。
その様子に気づいたアリアが、優しく尋ねた。
「……護様のこと、ご心配ですか?」
「なっ……! べ、別に、心配などしていない! あの脳筋のことだ、どうせどこかで調子に乗っているに決まっている!」
動揺するメル。アリアは、そんなメルに静かに語りかける。
「わたくし、メルさんをとても尊敬しております。
あの日、船で海賊に囲まれた時も、あなたは少しも怯えず、私たちを導いてくださいました。
わたくしはただ守られているだけでしたのに……」
アリアの言葉に、メルは思わず本音を吐露する。
「……ボクは、ただ知識があるだけだ。
護のように体を張って仲間を守ることも、カゲロウのように一撃で敵を仕留めることもできない。
ボクは、本当に、このパーティーの役に立っているのだろうか……」
それを聞いたアリアは、驚いたように、しかしきっぱりと言った。
「まあ、護様のこと、お好きだったのですね」
「ち、違うわ!」
「ふふ。メルさん、あなたはパーティーの『頭脳』であり、『生命線』ですわ。
あなたがいてくださらなければ、あの無茶ばかりなさるお二人は、とっくに死んでしまっている可能性があります。
あなたは、誰よりも、このパーティーに必要な方ですよ」
アリアの真っ直ぐな言葉に、メルの心は救われる。
そして、アリアは微笑んで提案した。
「護様、きっとお腹を空かせて帰ってきます。私たちで、何か温かいものでも作りませんか?」
「し、仕方ないな! 脳筋が腹を空かせて暴れられても迷惑だからな!」
メルは強がりを言いながらも、アリアの提案に乗った。
メルの指揮のもと、アリア、船員の女性たち、そして奴隷から解放された子供たちが協力して、船の厨房で料理を始める。
一品目は『護スペシャル・超巨大肉塊のハーブ焼き』。
護の好物である巨大な肉塊を、メルが錬金術で調合した、消化を助け筋肉の疲労を回復させる特殊なハーブソルトで焼き上げる。
二品目は『カゲロウもにっこり・リベルタリア風魚介のスープ』。
カゲロウの故郷の味を参考に、リベルタリアで獲れた新鮮な魚介を、心安らぐ優しい味のスープに仕上げる。
三品目は『メル特製・心と体に効く薬膳風リゾット』。
メルがアリアに教わりながら、王都の貴族が好むというリゾットを、疲労回復効果のある薬草をふんだんに使ってアレンジした、彼女の自信作だ。
船には、温かく家庭的な、幸せな匂いが満ち溢れる。
夕暮れ時、仕事を終えた護とカゲロウが船に戻ってくる。
甲板には、ランタンの温かい光の中で、豪華な料理が並べられ、仲間たちが笑顔で彼らを待っていた。
「お、おかえり、脳筋! ……別に、君のために作ったわけじゃないからな! 材料が、たまたま余っていただけだ!」
照れ隠しで、そっぽを向くメル。
「護様、カゲロウ様、お帰りなさいませ!」
アリアと、船員たちが、心からの笑顔で二人を迎える。
その光景に、護の一日の疲れも、カゲロウの心の闇も、全てが吹き飛んでいくようだった。
「ただいま! みんな!」
護は、最高の笑顔でそう答えた。
こうして、新たな戦いに向けて、パーティーの絆がまた一つ、深く、そして温かく結ばれる一夜が始まろうとしていた。
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