【33-3】覚醒と、中断
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」
死の恐怖と、仲間を失うことへの恐怖。それが引き金となり、護の内に眠る「獣」が再び覚醒する。
赤いオーラが、訓練場を吹き飛ばさんばかりの勢いで噴き出した。
理性を失った護は、獣のような咆哮を上げ、ゼノヴィアに襲いかかる。
「ハッ! 来たか!」
ゼノヴィアは、その攻撃を今度は本気の力で受け止める。
二人の激突は、訓練場の壁を砕き、地面を抉る、まさに天変地異のようだった。
しかし、暴走しかけたその時、訓練場の入り口からメルの絶叫が聞こえた。
「護! 戻ってこい、この大馬鹿者がーーーーっ!!」
その声に、護はハッと我に返る。
彼は、溢れ出す破壊衝動を、必死に自らの意志で制御しようと試みた。
暴走していた赤いオーラが徐々に凝縮され、彼の肉体をまるで半透明の鎧のように覆っていく。
それは不格好で荒々しいが、紛れもない「闘気」の原型だった。
「そうだ、小僧! それだ! それが貴様の本当の力だ! さあ、第二ラウンドと行こうじゃないか!」
覚醒した護を見て、ゼノヴィアは心底楽しそうに笑う。
二人が再び激突しようとした、その時だった。
訓練場の入り口に、ゼノヴィアにとってこの世で最も恐ろしい人物が、静かに立っていた。
財務長官、ポルティア・アウレリウスだ。
「ゼノヴィアッ! あなたという人は! また訓練場を半壊させて! この修繕費、一体どこの予算から捻出するおつもりですの!? あなたの給金から、全額天引きしますわよ!」
「うっ……ポ、ポルティア……これは、その、未来への投資というか、新人の育成で……」
「問答無用! 始末書50枚と、減俸3ヶ月ですわ!」
ギルド最強の戦士が、会計のお姉さんに公開説教されている。
そのシュールな光景を、訓練場にいた全員が固唾を飲んで見守っていた。
アルドレッドが、メルとカゲロウにそっと目配せをする。
「(小声で)……今のうちだ、カゲロウ。あの脳筋を回収して、ずらかるぞ」
二人は、まだ闘気を纏ったまま呆然と立ち尽くしている護の両脇を抱えると、コソコソと訓練場を後にする。
去り際に、護はまだポルティアに怒られているゼノヴィアに向かって、頭を下げた。
「なあ、姉御! さっきは、ありがとな! おかげで、なんか、すげぇもんが掴めそうだ!」
そのあまりにも真っ直ぐな感謝の言葉に、ゼノヴィアは一瞬きょとんとした顔をした後、ニカッと獰猛な笑みを浮かべた。
「誰が姉御だ、この馬鹿者が! だが、その意気やよし! 小僧、今日のところはここまでにしてやる! 必ず、また戦うぞ! 次に会う時までに、『闘気』を完全に己のモノにしておけ! でなければ、今度こそ死ぬぞ!」
三人が宿屋に戻ると、そこには心配そうな顔をしたアリアと船員たちが待っていた。
護の長く、そして奇妙な一日は、ようやく終わりを告げたのだった。
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