【33-1】置き去りの天才と、ため息の剣士
ワールド・ギルド・ユニオン本部、渉外審議長の応接室。
護が、戦闘総括長官ゼノヴィアに、まるで荷物のように連れ去られた後、部屋には重い沈黙が残されていた。
「な……なんなんだ、あの筋肉女は……! 嵐のように現れて、嵐のように去っていった……!」
メルは、あまりの出来事に呆然と呟く。
「……はぁ」
アルドレッドは、心底疲れたように、深いため息をついた。
「申し訳ありません、メル殿、カゲロウ殿。あれが、当ギルドが誇る『最強の矛』にして『最大の問題児』……戦闘総括長官、ゼノヴィア・“アイアンフィスト”・ボルグです」
彼は気を取り直すと、報酬の受け取りサインなどの事務手続きを、メルとカゲロウ相手に淡々と進め始めた。
「あの女……いえ、あの方、本当に長官なのですか? どう見ても、ただの野蛮な戦闘狂にしか見えませんでしたが」
メルの率直な疑問に、アルドレッドは苦笑いを浮かべながら、ゼノヴィアについて説明を始めた。
「ええ。彼女は、勇者の血を引く王家の遠縁にあたり、生まれながらにして規格外の力を持っていました。その昔、たった一人で魔王軍の一師団を壊滅させたこともある、ギルド最強の英雄です。ですが、その性格は、ご覧の通り豪放磊落そのもの。彼女の弟子は世界中にいますが、その訓練の激しさから、脱落者もまた数知れず……」
「では、なぜ護を? まさか、見込みがあるとか、そんな理由じゃあるまいな」
カゲロウが、珍しく口を挟む。
「おそらく、ダリウス殿からの報告で磐座殿のことを聞き、興味を持ったのでしょう。彼女にとって、磐座殿は久しぶりに現れた『心躍る逸材』なのです。……まあ、要するに、闘いたくて仕方なかっただけでしょうな」
メルが「護は、殺されたりしないだろうな……」と本気で心配すると、アルドレッドはさらりと言った。
「大丈夫。彼女は、見込みのある若者を、決して殺しはしません。ただ……半殺しにはしますが」
彼が、ゼノヴィアの意外と優しい(?)エピソードを話そうとした、その時だった。
ズゴオオオオオン!!!
地震かと思うほどの凄まじい衝撃が、ギルド本部全体を揺るがした。
バンッ! 応接室の扉が勢いよく開かれ、総合受付嬢のソフィアが血相を変えて飛び込んできた。
「アルドレッド様! 大変です! 地下の第三訓練場が……ゼノヴィア長官と磐座護様との戦闘で、半壊状態に……!」
「……様子を見に行きましょうか」
アルドレッドとメル、カゲロウは顔を見合わせると、急いで地下の訓練場へと向かった。
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