【32-2】見知らぬ天井と、煙臭い医者
「はぁ……はぁ……! ゆ、夢か……?」
絶叫と共に飛び起きた護の全身を、びっしょりと汗が濡らしている。
荒い息を整えながら周りを見渡すと、そこは見慣れた宿屋や船の部屋ではなかった。
古びた木製の天井、壁には薬草の束が吊るされ、消毒液の匂いが微かに漂っている。
「(どこだ、ここは……?)」
体を起こそうとするが、全身に、まるで引き裂かれるかのような激痛が走り、思わず呻き声を上げた。
「ぐっ……! いってぇ……!」
その時、ガチャリ、と部屋の扉が開かれた。
入ってきたのは、ヨレレの白衣を着て、無精髭を生やした、初老の男だった。
「ほう、意識が回復したみたいだな。まあ、もうすぐ治療魔法士の先生が来るから、それまでは安静にしておくんだな」
男はそう言うと、慣れた手つきでタバコに火をつけた。
「……あんた、誰だ?」
護は、警戒心を剥き出しにして尋ねる。
「俺か? 俺は医者だ。ドラヴィック、とでも呼んでくれ」
「医者……? 医者なのに、タバコ吸うのかよ……」
「ハッ、こいつは俺の精神安定剤みてえなもんだ。……まあ、なんだ。ここは、病院ってほど大層なもんじゃねえが、一応、診療所だ」
「そうか……。なあ、メルとカゲロウは! あいつらは、どこにいるんだ!?」
護の剣幕に、ドラヴィックは面倒くさそうに煙を吐き出した。
「メルとカゲロウ? ……ああ、あの子供と、もう一人の剣士か。安心しな、二人とも無事だ。子供の方は、さっきまで、あんたのベッドの脇で、ずーっと付きっきりで看病してたぜ。疲労が溜まってたんだろう、あんたに寄り添うようにして寝ちまってたから、俺が隣のベッドまで運んでおいた。剣士の方は、顎の骨にヒビが入ってたが、大したこたぁねえ。すぐに治る」
ドラヴィックは、護の顔をじろじろと見ながら、続けた。
「……それより、あんた、あの子供に感謝しときな。あの子の的確な応急処置がなけりゃ、あんた、本当に死んでたぜ。つうか、常人だったら、とっくの昔に死んでる。その頑丈すぎる体にも、感謝しとけよな」
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