表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『Transients』〜異世界で筋肉無双してモテたい!〜  作者: NewSankin
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

127/169

【31-3】黒鉄の絶望

「――見つけたぞ」


唐突に、世界から音が消えた。

波の音も、カモメの声も、風の音さえも。

ただ、地を這うような重低音だけが、護たちの鼓膜ではなく、脳髄を直接揺らした。


「え?」


護が振り返るよりも早く、異変は起きた。

背後に立っていたはずのメルとアリアが、糸の切れた人形のように崩れ落ちたのだ。


「メル!? アリアちゃん!?」


二人は白目を剥き、完全に意識を失っている。

そして、その横には――いつの間にか、巨大な「黒い影」が立っていた。

全身を黒鉄くろがねのフルプレートアーマーに包んだ巨漢。

背負った巨大な戦斧は、護の身長ほどもある。

男は、メルが持っていた研究資料を手際よく奪い取ると、兜の奥から赤い眼光を光らせた。


「貴様、何者だッ!」


カゲロウが動いた。

認識と同時に抜刀、神速の居合い。

達人級の剣士でさえ視認できないその一撃は、しかし――。


ガギィッ!


「ほう。なかなかの剣だ」


男は、振り向きもせず、ただ左腕を上げただけで、カゲロウの名刀を受け止めていた。

鎧に傷一つついていない。


「だが、まだ『遊び』の域を出んな」


「なッ……!?」


男の裏拳が、カゲロウを捉えた。

ただの裏拳ではない。空気が破裂するような衝撃音と共に、カゲロウの体が砲弾のように吹き飛び、船室の壁を突き破って甲板まで転がっていった。


「カゲロウ!!」


護の思考が真っ白になる。

一瞬だ。

たった一瞬で、仲間三人が無力化された。

目の前にいるのは、生物としての「格」が違う何か。

護の本能が、警鐘を鳴らしている。『逃げろ』と。 だが、護は吠えた。


「てめぇ……! よくも仲間を!!」


恐怖を怒りでねじ伏せ、護は戦斧『岩砕き』を全力で叩きつけた。

岩盤すら粉砕する渾身の一撃。 男はそれを、片手で持った黒い戦斧で、あくびが出るほど軽く受け止めた。


「ぬん」

「ぐ、おおおおっ!?」


圧倒的な質量の差。

押し返された護は、たたらを踏んで後退する。


「良い『剛』だ、人間。名は?」

「……磐座、護だ! てめぇこそ、何者だ!」


「ふん」


男は鼻を鳴らし、ゆっくりと巨体を護に向けた。

その威圧感だけで、護の肌が粟立つ。


「俺を倒したければ、30秒でやってみせろ。できなければ――」


男は巨大な戦斧の刃を、気絶しているメルの細い首筋に、そっと添えた。


「この人間の首が飛ぶ」


「ッ……!?」


「始めろ」


男の宣告と共に、無慈悲なカウントダウンが始まった。


「ふざけるなああああっ!」


護は吠え、大地を蹴った。

《岩盤タックル》で体勢を崩し、《パワースイング》で頭蓋を砕く。

いつもの必勝パターンだ。 だが、男は動かない。

護のタックルを膝の微調整だけでいなし、振るわれる戦斧を、まるで子供の玩具のように柄だけで弾き返す。


「遅い。単調だ。怒りに任せて振り回すだけの斧など、止まっているも同然」

「くそっ! くそっ! なんで当たらねえんだ!」


焦れば焦るほど、護の動きは大きくなり、隙だらけになる。

男の瞳が、冷徹に護の隙を見据えた。


「……残り、10秒」


冷酷な声が響く。

強い。強すぎる。

今まで戦ってきたどの敵とも違う。

これは、絶壁だ。


(俺は、戦士だ……守るんじゃなかったのかよ……!)


目の前で、動かないメルの首に刃が食い込む。

赤い血が、白い肌を伝う。


「残り、5、4、3……」


守れない。

誰も守れずに終わるのか。


「2……」


男が斧を振り上げた。

メルが死ぬ。


「やめろおおおおおおおおおおっ!!」


護の中で、何かが「切れた」。

お読みいただきありがとうございます!


もし「面白そう!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、 ページ下の【☆】マークから評価や、ブックマーク登録をしていただけると、作者のモチベーションがマッハで上がります! (感想もお待ちしています!)


★更新予定 毎日19時に更新します。ストックはあるつもりなので、安心してお付き合いください。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ