【31-1】祭りのあと、それぞれの船出
魔獣と化したバルボスとの死闘から一夜が明けた。
喧噪と狂気に満ちていた海賊都市トルトゥーガは、嘘のように静まり返っていた。
港に停泊する『最強!スーパーガーディアンズ号』は満身創痍だ。
マストは折れ、船腹には亀裂が走り、帆は焼け焦げている。だが、その姿は不思議と誇らしげに見えた。
「船長……本当に、ありがとうございました」
甲板で、老航海士のギデオンが深々と頭を下げた。
彼の後ろには、生き残った元奴隷の船員たちが整列している。
彼らの瞳にもう、この間までの濁った絶望の色はない。
あるのは、一人の人間としての尊厳と、未来への希望だ。
「俺たち、あんたがいなかったら、今頃は海の底か、また誰かの奴隷でした」
「よせって。礼を言うのは俺の方だ。お前らがいなけりゃ、あの化け物には勝てなかった」
護は照れくさそうに鼻をこすると、懐から革袋を取り出し、ギデオンに放った。
ずしり、と重い音がする。優勝賞金の一部と、余った食料だ。
「活動資金だ。好きに使え」
「こんな大金……! ですが船長、これは――」
「俺たちはこれから、あの『ブラック・クラーケン号』を調べに行く。その間、このオンボロ船の修理を頼めるか? 次の旅には、最高の船が必要なんだ」
護の言葉に、ギデオンは目を見開き、やがて皺だらけの顔をくしゃくしゃにして笑った。
「……合点承知! この船は、もはや我らの家。必ずや、新造船以上の最高傑作に仕上げてみせます!」
「おう! 頼んだぜ!」
護とギデオンが、男同士の熱い握手を交わす。
信頼で結ばれた背中を見送りながら、護はカゲロウ、メル、アリアの三人を振り返った。
「さて、と。感動の別れの後は、現実と向き合いますか」
「ああ。」
カゲロウが鋭い視線を港の奥、主を失った巨大ガレオン船『ブラック・クラーケン号』へと向けた。
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