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『Transients』〜異世界で筋肉無双してモテたい!〜  作者: NewSankin
第一章

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【30-2】反撃の狼煙

船体が締め上げられ、ミシミシと悲鳴を上げる。

圧倒的な暴力と、理解を超えた再生能力。

死の恐怖が、船員たちの心を折ろうとしていた。


「あ、あぁ……終わりだ……」


誰かが絶望の声を漏らした、その時だ。


「おい、野郎ども! 下を向いてんじゃねえ!」


腹の底に響くような一喝が、甲板の空気を震わせた。 護だ。彼は揺れる甲板に仁王立ちし、不敵な笑みを浮かべていた。


「この船の船長は誰だ! 俺だろ! 俺が、絶対に守ってみせる! だから、前を向け!」


その言葉に、論理的な根拠など何もない。

だが、その太陽のような明るさと、揺るぎない自信が、恐怖に凍りついていた船員たちの心を解かした。

そうだ、俺たちの船長は『あの』磐座護だ。

彼なら、どんな絶望も粉砕してくれる。


「……ふぅ、まったく。君というやつは」


メルが呆れたように、しかし口元を緩めて眼鏡を押し上げた。

恐怖は消えた。ならば、次は反撃の時間だ。


「いいかい、よく聞け! あれの弱点は二つ! 一つは、再生の核となっている額の『注射痕』! そしてもう一つは、あの巨大な一つ目だ! 目を潰せば、一瞬だけ動きが止まるはずだ!」


メルの冷静な分析が、具体的な勝利への道筋を示す。


「ギデオンさん! 大砲の準備を!」

「おうよ、嬢ちゃん! 野郎ども、大砲だ! あのデカい目玉にぶち込んでやれ!」


ギデオンの号令で、船員たちが大砲に取り付く。

船の傾きに合わせて角度を極限まで上げ、魔獣の単眼に照準を絞る。


「右へ三度修正! 風を読んで! ……今です!」


アリアが風の流れを読み切り、鋭く叫んだ。


ドォォォン!!


放たれた砲弾は、吸い込まれるように魔獣の巨大な瞳へと直撃した。


「グギャアアアアアッ!!」


魔獣が苦悶の叫びを上げ、拘束が僅かに緩む。

その一瞬の隙を、カゲロウは見逃さなかった。


「――《疾風》」


甲板を疾走し、宙へと舞う。

銀光一閃。

船を締め上げていた数本の触手が、神速の斬撃によって瞬時に断ち切られた。


「護、行け!」


同時にメルが動く。懐から取り出したフラスコを、護の進路上に残る触手へと投げつけた。

錬金術で生成された『強酸の小瓶』が破裂し、触手の表面を溶かして動きを鈍らせる。

仲間たちが切り開いた、魔獣への一直線の道。 護は咆哮と共に、その道を駆け抜けた。


だが、魔獣の再生能力はメルの予測を上回っていた。

カゲロウに斬られた触手が、爆発的な速度で再生し、鞭のようにしなって護を襲ったのだ。


「うおおおっ!?」


「護!」


仲間の悲鳴が重なる。

一本の触手が護の胴体を捕らえ、宙吊りにした。魔獣はそのまま彼を握り潰そうと力を込める。

護の鋼鉄の筋肉が、ギリギリと音を立てて拮抗する。

だが、さらに二本、三本の触手が絡みつき、彼の自由を奪っていく。


「くそっ……! 離しやがれぇ!」


護は歯を食いしばり、拘束された片腕を強引に引き抜くと、絡みつく触手の一本を素手で引きちぎった。 激痛に狂った魔獣は、護の体を振り回し、そのまま船のメインマストへと叩きつけた。


バキィィィン!!


凄まじい衝撃音。

船の背骨であるマストが半ばからへし折れ、護の体はボロ雑巾のように甲板へと転がった。


「護!!」

「船長!」


誰もが最悪の事態を想像した。

だが、瓦礫の山から、むくりと巨体が起き上がった。

服は裂け、体中傷だらけだ。それでも、その瞳の光は消えていない。

護は立ち上がり、へし折れて先端が槍のように尖ったマストを見つめ――ニヤリと笑った。


「……みんな、聞こえるか。俺に、考えがある」


護は折れたマストを肩に担ぎ上げた。

その無茶苦茶な作戦を聞いた仲間たちは、一瞬の沈黙の後、全員が覚悟を決めた顔で頷いた。


「野郎ども! 船長を、敵の懐まで送り届けるぞ!」


ギデオンが叫ぶ。

カゲロウが前衛に立ち、メルとアリアが左右を固める。

全員の力が、一点に集中した。


「うおおおおおっ!」


護が走る。


行く手を阻む触手をカゲロウが斬り、メルが酸で溶かし、アリアが風の魔法で護の背中を押す。

そして、魔獣の懐へと飛び込んだ護は、担ぎ上げたマストを構え、天高く跳躍した。


「お前がどんな悪い奴だったか知らねえが……!」


空中で、護の筋肉が限界まで膨張する。

狙うは、再生の核である額の傷跡。


「安らかに、眠りやがれぇぇぇっ!!」


全身全霊の力を込め、巨大な木のマストを突き出す。


ズドンッ!!


衝撃と共にマストは魔獣の額を深々と貫き、その奥にある禍々しい魔力の核を粉砕した。


「ギ、ギャアアアアアアアア……ッ!!」


断末魔の叫びと共に、魔獣バルボスの巨体が痙攣し、紫色の飛沫を上げて崩れ落ちていく。

やがてその体は光の粒子となって霧散し、海の底へと沈んでいった。


戦いが終わり、静寂が戻った海に、ボロボロになった『最強!スーパーガーディアンズ号』が浮かんでいる。

マストは折れ、船体は穴だらけだ。だが、沈んではいない。 彼らは生きて、勝利したのだ。


なんとかトルトゥーガの港へ帰還した彼らを迎えたのは、畏怖と称賛の眼差しだった。

生き残った海賊たちは、信じられないものを見る目で彼らを見つめている。

そこにはもう、嘲笑の色はない。圧倒的な「力」と、仲間を守り抜いた「絆」への敬意だけがあった。


甲板で大の字になっていた護が、むくりと起き上がる。 その顔は傷だらけで、ススで真っ黒に汚れていたが、歯を見せて笑うその表情は、どこまでも晴れやかだった。


「さて、と……まずは、美味い飯、だな!」


その一言に、張り詰めていた空気が緩み、仲間たちが一斉に笑い崩れた。

無法の街トルトゥーガを襲った悪夢は去った。

彼らの前には、新たな冒険へと続く、広大な海が広がっていた。

お読みいただきありがとうございます!


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★更新予定 毎日19時に更新します。ストックはあるつもりなので、安心してお付き合いください。


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