【29-1】狂宴の海戦
コロシアム二日目の朝。海賊都市トルトゥーガの港は、昨日とは比較にならないほどの熱気に包まれていた。海風すらも観衆の興奮を孕み、肌にまとわりつくようだ。
「おい、見たかよ! 昨日の『最強!スーパーガーディアンズ』! あのデカブツ、マジで化け物だぜ!」
「ああ! 俺はあいつらに賭けて、大儲けさせてもらったんだ! 今日も頼むぜ、英雄様!」
昨日までは嘲笑の的でしかなかった護たちの船『最強!スーパーガーディアンズ号』の周囲には、今や黒山の人だかりができていた。
「あのダークホースに賭ける!」と息巻く物好きな観客や、一攫千金を夢見る海賊たちが、期待に満ちた声を張り上げている。
「へへん! 俺も、この街でちょっとは有名になったみてえだな!」
護は甲板の舳先に立ち、仁王立ちで集まった観客を見下ろすと、満面の笑みで手を振った。その姿は、朝日を背負って輝く巨岩のようだった。
「……脳筋は、すぐに調子に乗るからな。まあ、おかげでボクたちの船を狙う輩も減っただろうが」
メルがやれやれと肩をすくめ、呆れたように呟く。 その時、会場全体を震わせるようなアナウンサーの絶叫が響き渡った。
「さあ、野郎ども! いよいよ準決勝の始まりだ!
東の海域! 赤コーナーは、この海域で最も残忍とされる、『血濡れ鮫海賊団』! キャプテン・ジョーズの登場だァ!」
ドッと沸き起こる歓声と共に、一隻の巨大なガレオン船が姿を現した。 護たちの船の優に倍はある巨体。
その舷側には、獲物を狙うサメの歯のように夥しい数の大砲が並んでいる。
甲板にひしめく船員たちも、歴戦の猛者であることを如実に物語る、殺気立った海賊ばかりだ。
「青コーナー! 昨日、彗星の如く現れた我らがダークホース!『最強!スーパーガーディアンズ』!」
アナウンスに合わせて、護たちの船が巨大な『ブラッディ・シャーク号』の隣へと進み出る。
その体格差は、大人と子供――いや、巨象と蟻ほどにも見えた。
相手の船員たちが放つ、肌を刺すような威圧感に、こちらの船員たちが息を呑む。
アリアの情報によれば、彼らは一回戦、二回戦共に、相手の船を文字通り「海の藻屑」に変え、残虐の限りを尽くして勝利しているという。
試合開始直前。『最強!スーパーガーディアンズ号』の船内には、重苦しい空気が漂っていた。
「……どう考えても、火力も、船の性能も、向こうが上だ」
カゲロウの冷静かつ無慈悲な分析に、船員たちの顔が曇る。
「わしらの操船技術があれば、機動力では負けん。
メルさんの煙幕で視界を奪い、一撃離脱を繰り返すしか、勝機は……」
老航海士のギデオンが、苦渋の表情で地図を睨みながら提案する。
他に有効な策は見当たらない。一行はその作戦に命運を託すことを決意した。
ドォォォン!! 試合開始の合図となる花火が、高く打ち上げられた。
「メル! 頼む!」
「言われずとも!」
護の合図と共に、メルが錬金術で生成した特製の煙幕弾を放つ。
紫煙が爆発的に広がり、敵船を包み込もうとした――その瞬間だった。
相手の船から突如として暴風が巻き起こり、煙は瞬く間にかき消されてしまったのだ。
「なっ……! 煙幕が!」
「まずい! 作戦が、読まれていた……!」
甲板を見ると、そこには扇風機のような形状をした巨大な魔道具が稼働していた。風属性の魔石を動力源とする、対煙幕用の兵器だ。
作戦の要を潰された一行に対し、敵船から容赦のない砲弾の雨が降り注ぐ。
ドガァァン! バキィッ!
船員たちの神業的な操船で、どうにか致命傷となる被弾は避けているものの、水柱が上がるたびに船体は大きく揺さぶられ、防戦一方のジリ貧状態へと追い込まれていく。
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