【26-2】囚われの少女と、海賊コロシアム
「さて、まずは情報収集だな」
カゲロウの言葉に、メルも頷く。
「この街で、最も情報が集まる場所…。こういう無法地帯の定石で言えば、やはり酒場だろうな」
三人は、港でひときわ大きく、そしてひときわ騒がしい酒場『セイレーンの歌声亭』へと足を踏み入れた。中は、世界中の荒くれ者たちが、酒を飲み、賭博に興じ、喧嘩をする、カオスな空間だった。メルの眉間に、深い皺が刻まれる。
「…空気が悪い。一刻も早く、ここから出たい」
「まあ、そう言うなよ。腹が減っては戦はできねえってな!」
護は、そんなメルの様子も気にせず、カウンターで巨大な骨付き肉の塊を注文した。
三人がカウンターで情報を探っていると、店の奥の薄暗い路地で、数人の海賊が、一人の小さな少女を取り囲んでいるのが目に入った。
「おい、嬢ちゃん。一人かい?俺たちと、いいことしようぜぇ」
「ひゃはは!こいつ、なかなかの上玉だぜ!高く売れそうだ!」
下卑た笑い声。少女は、恐怖に震えている。
「おい、てめえら。女の子相手に、何してやがる」
護が、地を這うような低い声で割って入る。
海賊たちは「よそ者がでかい顔してんじゃねえ!」と襲いかかってくるが、護とカゲロウに一瞬で伸されてしまう。
助けられた少女、アリアは、震える声で語り始めた。
「あリがとうございます…。わ、わたくしは、アリアと申します…。数日前、家の庭を散歩していたら、急に布を被せられて…気づいたら、暗い船の中に…。そして、この街に連れてこられて、さっき、変な男の人に売り飛ばされそうになったところを、勇気を振り絞って、逃げてきたのです…!」
彼女は、護とカゲロウの、いかにも「海賊」然とした風貌を見て、再び怯えてしまう。
「ひっ…!」
その様子を見たメルが、アリアの前に立ち、優しく声をかけた。
「大丈夫だ。ボクたちは、君の敵じゃない。
この脳筋と、そこの根暗は、見た目は怖いが、悪い奴らじゃないから、安心しろ」
「…うん」
メルの言葉に、アリアは少しだけ落ち着きを取り戻した。
そして、彼女は船に閉じ込められている間、すぐ近くの部屋から、「毎晩、恐ろしい獣のような呻き声が聞こえてきて、怖かった」と、重要な情報を漏らす。
その言葉に、メルとカゲロウの目が光った。「魔物の裏取引」と「獣の呻き声」。自分たちが追っている海賊船である可能性が、一気に高まった。
アリアの情報と、カゲロウが集めた情報を元に、三人は港に停泊している、一隻の不審な大型ガレオン船を特定した。しかし、その船の周りには、おびただしい数の海賊たちがたむろしており、近づくことすらできない。
近くで酔っ払っている海賊に話を聞くと、彼は上機嫌で教えてくれた。
「おう、兄ちゃん!あれは『ブラック・クラーケン号』!
今夜、あの船に乗るための、『海賊コロシアム』の出場権をかけた、予選バトルロイヤルが始まるのさ!」
護が詳細を聞くと、海賊はゲラゲラ笑いながら答える。
「優勝すりゃあ、金と女と名誉が手に入る!
そして、その褒美は、あの『ブラック・クラーケン号』の船上で、船長直々に渡されるってわけよ!」
「よし、決まりだな!その『海賊コロシアム』ってのに、俺が出てみるぜ!」
「待て、脳筋!まさか、金と女という言葉に釣られたわけじゃないだろうな!?」
メルの疑いの眼差しに、護は慌てて否定する。
「ち、違うわ!よく考えろよ!優勝すりゃあ、あの船に、堂々と乗り込めるんだぞ?
そこで、モルゴーに繋がる手がかりを探せばいい!
これ以上に効率的な潜入方法が、他にあるか!?」
その、あまりにも正論で、かつ護らしくない「合理的」な意見に、メルとカゲロウも納得せざるを得なかった。
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