【26-1】欲望と血の匂い
船旅を終え、
護、カゲロウ、メルの三人を乗せた小型高速船は、
ついに次なる目的地――
リベルタリア自由都市同盟の港町、トルトゥーガへと辿り着いた。
港に近づくにつれ、空気が目に見えて変わっていく。
潮の匂い。
安酒の酸っぱい臭気。
そして、鼻の奥にまとわりつく、かすかな血の香り。
「……ここが、海賊の街か」
ポルト・リベルタの喧騒とは、質が違う。
ここにあるのは、洗練ではなく、剥き出しの欲望だった。
建物のほとんどは、潮風に晒された粗末な木造。
今にも崩れ落ちそうなものばかりだ。
道を行き交うのは、屈強な船乗りや、
腰に錆びた剣を提げた、見るからに柄の悪い海賊たち。
昼間から酒を飲み、
大声で笑い、
気に入らない相手がいれば、その場で殴り合いを始める。
――それが、この街の日常だった。
「おい、アンタら」
船長が、呆れたように声をかけてくる。
「そんな格好じゃ、一分もしないうちにカモにされて、
身ぐるみ剥がされるのがオチだぜ」
そう言って、船の奥から年季の入った衣装を放り投げた。
「うおお!
なんだこれ、カッケェじゃねえか!」
護は、ワイルドな革鎧と使い古されたコートを羽織り、
無邪気に喜んでいる。
カゲロウは、顔を隠せるフード付きの黒い外套を受け取ると、
無言のまま人混みに溶け込む準備を整えた。
「……最悪だ」
一方、メルはサイズの合わない船員服を見下ろし、
心底嫌そうに顔を歪める。
「こんな、下品で、汗臭い服……」
だが、文句を言っても始まらない。
三人は、即席の“海賊”として、街へと足を踏み出した。
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