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リコルドとオルカが大号泣している。
「おめ……おめでとう! アル! やっと、やっと言えたんだな……!」
「あ、あんたは、やれば、できるとっ、信じてたぜっ……!」
男三人で抱き合いながら泣いている姿はかなり引くが、きっとそれだけ二人には苦労をかけてたんだろうなぁ、アルジェント様。それに引き換え、
「リモーネ……おめでとう! アルジェント様と、これからも仲良くね……!」
瞳を潤ませながら手を握ってくれるランチアの、天元突破の可愛さはどうよ! でも、こんなこと言われると私の涙腺が緩くなっちゃうから困る。私は涙をこらえてランチアを抱き締めた。
互いの想いを確かめ合った私とアルジェント様は、心配をかけた皆へ報告をするため、夏季休暇中に皆をテルペン侯爵家へ招待した。
我が家の自慢の庭園でお茶をしている真っ最中なのである。無事に、想いを伝えられたことを告げると、皆自分のことのように喜んでくれた。
「オルカには私とアルジェント様、両方のフォローをさせちゃってごめんね。大変だったんじゃない?」
「気にすんな。友達が困ってたら助けるのは当たり前だからな」
「オルカは本当にいい男だ! 私はオルカが大好きだぞ!」
「全くだ。才能があって性格もいい、僕が女なら放っておかないな」
あれ? なんか、オルカがモテモテじゃない? いつの間にかリコルドだけでなくアルジェント様も攻略しているだと!? オルカ……恐ろしい子!
私がオルカに対してライバル認定すべきか悩んでいると、アルジェント様からすっと小箱を渡された。
「ん? 何ですか、これ」
「プレゼントだよ。開けてみて」
え、このサイズの箱でプレゼントとなると、十中八九指輪ですよね!?
や、やだ、アルジェント様ったら、皆の前で指輪なんて。……嬉しいですけどね?
わくわくしながら箱を開けると、そこには予想通り指輪が収められていた。
ん? 予想……通り……?
「タカだ」
「タカだな」
「タカねぇ」
オルカ、リコルド、ランチアが言う通り、その指輪のデザインはタカだった。広げた羽が筒状になったそれは、とてもカッコイイデザインなんだけど。
「……あれ、男もののデザインじゃないか?」
「ごついな」
「強そうね」
皆がヒソヒソ言うように、ちょ~っと女性に贈るには不思議なデザインだ。
「あ、あの、アルジェント様。どうしてタカのモチーフに?」
「え。昔、結婚後に飼いたいペットは何か聞いたら、タカがいいって言ってただろう? 君はタカが好きだと思ったから喜んでくれるかと思って……」
んん~? 昔? ペット?
そう言われて思い出した。確かに昔、そんなことを聞かれたけど……あれって5歳頃の話だし、しかも鷹匠を見た後のことだったからなぁ。今は別にそこまでタカに惹かれているわけではないんだけど……。
ちらっと見ると、アルジェント様が目をキラキラさせて私を見守っている。
「えっと……ありがとうございます。大切にしますね」
……うん。カッコイイからいいんだ。付けるとかなり強そうに見えるだろうけど、それが何だ。よく見れば、つぶらな瞳が可愛いじゃないか!
やっぱあいつポンコツだな、とオルカが言ってるのが聞こえたけど、気にしない。そこがアルジェント様の可愛いところなんだもの。
「今度お礼に、猫の刺繍のハンカチ贈りますね」
「嬉しいな。覚えててくれたんだね」
アルジェント様と結婚したら、きっと猫を飼うだろうな。ほらだって、タカって飼うの大変だし、私にそこまでの熱意は無いからね。あ、でも先に子供が欲しいかも。
「猫を飼う前に、子供を作りましょうね!」
「ζΨЙЁЩ※!?」
あれ、アルジェント様が壊れた。どうしたの!?
「あいつ、こえーな」
「無自覚最強か……」
「リモーネはこうでなきゃね!」
オルカたちが何か言ってるが、意味が分からない。私、何かした?
首を傾げる私に、オルカがこう締めくくった。
「めでたしめでたしでいいと思うぜ。あれだ、土下座王子と激にぶ姫はその後も幸せに暮らしました~ってやつだよ」
誰が激にぶ姫か!
婚約者に二回も土下座をされてしまいましたが――今、私は幸せです!




