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「リモーネ。海へ行かないか」
そうアルジェント様に誘われたのは、ちょうど夏季休暇に入る前日だった。
「海ですか? いいですけど、何をしに? ……あ、新しい攻撃魔法の試し打ちですか?」
「全然違う。そうじゃなくて、暑くなってきたから涼みに行かないかと誘っているんだ」
「レジャーの方でしたか」
そういえば、去年ランチアと海辺に遊びに行った時は飲食店が軒並み大行列で、ちょっと大変な思いをした記憶がある。あの時は夏季休暇の中頃で、一番混んでたんだよね。
今ならまだ空いているだろうから、ゆっくりできるかもしれない。
「泳ぐには少し早いが、洞窟迷路というイベントが開催されているらしい」
「なんです、それ」
「魔法師団の演習で、誤って岩場に大量に穴を開けてしまったらしくてな。有効活用しようと改造して迷路を作ったそうだ。入場料を取れば次の演習費用も賄えるからと」
「わー商魂たくましい」
国の財政厳しいからね。みんな頑張っててえらいなぁ。
「面白そうですね! 行きたいです」
「良かった。では明日の午後に迎えに行くよ。ディナーの予約もしているから、楽しみにしていてくれ」
そう言って、アルジェント様は去っていったけど。
……これって、デートじゃない?
いや、そりゃ今までも二人でおでかけしたことはあるけども!
恋心を自覚してからの二人きりでのおでかけは初めてだ。ジェラート屋はカウントしないよ! 途中までオルカたちと一緒だったし、もともと二人で出かける予定じゃなかったからね。
ああ、どうしよう! 何を着て行けばいいの!? 制服以外を着るのは久しぶりだから迷う!
確かこの時期にぴったりのワンピースがあったはず……定番の白でいくか、アクアブルーもいいかも……パステルグリーンもアリかなぁ……。
王都の屋敷に戻った私は、メイドたちと一緒にクローゼットを漁りまくった。
「お嬢様、ヘアスタイルはどうしましょうか?」
「えーとえーと、夏だから纏めたほうがいいかなぁ?」
「では、ゆるく編み込みましょうか。以前アルジェント様からプレゼントされた髪飾りを使いましょうね!」
みんなでキャッキャと盛り上がる。
寮生活でしばらく家にいなかったから、メイドたちがすごく張り切ってくれている。
頼もしいなぁ。
アルジェント様はただ遊びに誘ってくれただけだろうけど、私にとっては大切なデートだ。
ここで、告白してみせる!
気合を入れるためにも、私はメイドたちと夜までコーディネートについて話し合った。




