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「リモーネ嬢……たびたび迷惑をかけて申し訳ない……」
うなだれたまま菓子折りを差し出してくるルーポ様。
この人、学習能力無いのかな!? 昨日の今日で何やってるんだ!
いい加減、私が説教しようとすると――
「エイミーが、君に不愉快な思いをさせたそうで……」
……この人、エイミーさんのことを謝りにきたのか。幼馴染で婚約者候補とはいえ、彼女を大切に思っていなければ謝罪になんて来ないだろう。
彼にとって、エイミーさんはどのような存在なんだろう?
ふと興味がわいてしまった私は、ルーポ様を魔法陣研究部に招くことにした。あそこなら二人きりにならないからね。
部室に行くと、ランチアが居なかった。あ~今日はオルソ様とデートの日だったか。
私はオルカと――なぜか最近部室に入り浸っているリコルドにルーポ様を紹介し、全員でお茶を囲んだ。
「そ、その、まずはリモーネ嬢に改めて謝罪したい。無礼な態度だけでなく、その後の俺の行動のせいで不名誉な噂に巻き込んでしまって……」
「いや、そこは私も気づかなかったんで、お互いさまですよ。この程度の噂ならすぐに消えるから問題無いです」
「そう言ってもらえるとありがたい……。昨日、アルジェント様に注意されて、俺はようやく自分の行動を振り返ることができた。彼にもとても不快な思いをさせてしまって……」
ん~それはどうだろ。アルジェント様は不快っていうより、私のことを助けようとしただけみたいだけど。
「……彼に、言われてしまったよ。大切な婚約者を泣かせるような真似はするなと」
……んんん???
ルーポ様以外の全員の視線がかち合う。皆の心が一つになっているのが分かった。
“お前の言えたセリフじゃないだろ”って。
「ど、どうかしたのか?」
私たちの不穏な雰囲気に、ルーポ様がおびえている。いけない、いけない。
「あ、いえ失礼。……ところで、アルジェント様は他になんと?」
「いつも傍にいると気付かないかもしれないが、失ってから気付いても遅いんだと。自分が本当に生涯を共にしたいのは誰なのか考えろと、まるで自分のことのように熱く語られたよ。アルジェント様は本当にいい人だね……こんな俺にまで親身になってくれるなんて」
ふ~ん。アルジェント様、いいこと言うじゃん。そんなに熱血漢な人じゃなかったと思うけど……。
私が感心していると、オルカとリコルドがこそこそ話していた。
「完全に自分と重ねてんじゃねーか」
「自分の二の舞にさせたくなかったんだな……あいつもたいがいお人好しだ」
……一体何の話だろう? よく分からないけど、とりあえずアルジェント様の言葉にルーポ様は考えさせられたらしい。
「昨日の夜、エイミーが訪ねてきて言ったんだ。俺に好きな人がいるなら、自分は婚約者候補を降りるって。……恥ずかしながら、そう言われた瞬間、嫌だと思ったんだ。エイミーはこの先もずっと俺の隣で笑っていてくれないと嫌だと。……馬鹿だろ? こんなに長い間一緒にいたのに気づかないなんて」
自嘲するルーポ様に、オルカとリコルドが思い切り首を振った。
「そんなことねーよ! もっとクソ鈍いやつも世の中にはいるんだ!」
「そうだ、君はまだマシだ!」
……なんか、すごい力強く励ましてる。二人とも何かあったの?
しかし、ルーポ様の話は耳に痛かった。長い間恋心に気付かないとか……普通は無いよね。
私とルーポ様って、超鈍感同盟とか組んだらいいのかも。
「だから俺は昨日、エイミーに求婚した。俺が愛してるのは君だけだと。生涯を共にしてほしいと」
なんですと!? あわわわわ、同盟組む前に先を越された! 手は早いのか、貴様!
私が目を白黒させている横で、オルカとリコルドが盛り上がっていた。
「マジかよ!? どこかのヘタレとは大違いだな! あんたすげーよ、ルーポ様!」
「あいつにもこれだけの行動力があれば……! おめでとう! ルーポ様!」
一体誰をディスってるのか知らないが、二人の知り合いには相当なヘタレがいるらしい。
もしかしたら、私と同じくらいの鈍感なのかも。思わずそのヘタレに親近感を持ってしまった。




