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「リモーネ様、少し顔色が悪いようですが、大丈夫ですか?」
一緒にランチを摂っていたメーラさんに心配そうに顔を覗き込まれ、私は曖昧に笑った。
恋心に振り回され過ぎて寝不足なんですとは恥ずかしくて言えない。
アルジェント様が好きなのはメーラさんなんだから、ちゃんと二人を取り持たなくちゃと思うのに、肝心の本人が消極的過ぎるせいでどうすればいいのか分からなくなってきた。
なんだか自分が空回りしているような気がする……。あ~ストレスたまるなぁ。
つい考え込んでいると、視界に鮮やかな赤が飛び込んできた。
「こんにちは、リモーネ嬢。美しい顔が浮かない表情になっているけど、何かお悩みかな?」
声をかけてきたのは侯爵令息のルーポ様だった。わー近くで見ると迫力のある真っ赤な髪!
「こんにちは、ルーポ様。ただの寝不足ですよ。お気になさらず」
あまり親しくしたことはないのに、どうして声をかけてきたんだろう。とりあえず当たり障りのない返事をする。
「……最近、よくメーラ嬢と一緒にいるよね? アルジェント様とケンカでもした?倦怠期ってやつかな?」
「はぁ?」
からかうような物言いにカチンときた。……よし、貴様は敵認定だ。
ちょうどストレスたまっていたし、ストレス解消のサンドバッグにしてやろうか……。
私がよからぬことを考えていると、メーラさんが私とルーポ様の間に立った。
「ルーポ様! リモーネ様に失礼なこと言わないで下さい!」
「だ、だって、最近君はリモーネ嬢と一緒にいてばかりで……。ちっとも俺と会ってくれないじゃないか……」
ははあぁぁん? な~るほど。そ~ゆ~ことですか~。私に嫉妬していたのね。
だから突っかかってきたのか。
確かに、最近私はメーラさんを独占し過ぎていたような気はする。そこはちょっと申し訳なかった。
だがしかし! こんなお子様みたいな嫉妬をする人に、私の大事なメーラさんをお任せすることはできない。
「メーラさん。ルーポ様に悪気はないと思うわ。私なら大丈夫よ」
「リモーネ様……」
にこりと笑ってメーラさんを安心させる。そう、私なら大丈夫。だって自分で反撃するから。
「ルーポ様って本当にメーラさんのこと、よく見てるんですねぇ~。まるでストーカーみたいに」
「えっ、お、俺はストーカーじゃ……」
「まあ他の女性のこともよく見ていらっしゃいますものね。サラ様やシーナ様とも仲睦まじい様子ですし? スージー様とも放課後デートをされているとか?」
「ちょっ! メーラ嬢の前でっ」
「女性に囲まれるのが本当にお好きなんですね~。でも、倦怠期になるほど深いお付き合いをしたい方には見向きもされていないようで」
くすっと笑うと、ルーポ様はぶるぶると身体を震わせ、踵を返した。
「し、失礼するっ!」
ほんとに失礼だったよ、あんた。
だけど、おかげでちょっとスッキリした。いやいや、私はいじめっ子ではないよ? 今のはやられたからやり返しただけだもん。倍返しなんて大人げないことはやりません。




