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26 オルカサイド

リモーネとアルが消えたジェラート屋で、俺はメーラ嬢と向かい合っていた。

メーラ嬢がヘーゼルナッツ味を追加注文していたので、何となく付き合いで俺も桃味を追加する。


「オルカさんも割と甘い物食べるんだね」

「オルカでいいよ。研究ばっかしてると甘いもん欲しくなるんだよな」

「分かる! 私も!」


平民同士の気安さもあって、彼女と二人になっても思いのほか気詰まりではなかった。


「それにしても、リモーネ様とアルジェント様は本当に仲良しだよね。みんなが学園一のカップルだって言うのも納得だわ」

「そ、そうだな……」


思わず目が泳いだ。うん、はたから見てれば円満カップルなんだけどな。アルが拗らせすぎたせいで、いろいろおかしなことになっちまっている。

今日はリモーネの作戦に付き合ったが、もともとうまくいかないだろうとは思っていた。

案の定、アルは俺とリモーネを二人きりにすることを許さず、メーラ嬢のことなど気にもかけずにリモーネを攫って行ったわけで。


この流れで、どうにかリモーネに告白してほしいと願うが、ヤツのヘタレっぷりを考えれば難しいだろうな。

はぁとため息をついた俺に、メーラ嬢が紙の包みを差し出してきた。


「これは?」

「私ブレンドの薬草茶! 疲労回復に効果があるよ。良かったらどうぞ」

「あ、ありがとう」


……いい子だな。可愛くて才能もあるとなれば、やっかみを受けそうなもんだが、彼女はこの性格で皆に好かれているんだろう。優しく明るく、傍にいると穏やかな気持ちになるような……。


「リモーネ様にも飲んでもらったけど、すごく良く効くって褒めてくれたんだ!」

「メーラ嬢はリモーネのことが本当に好きなんだな」


俺がそう言うと、メーラ嬢はまぶしい笑顔を見せた。


「ええ、大好き! リモーネ様は覚えてないみたいだけど、私、入学してすぐにリモーネ様に助けられたことがあるの」

「そうなのか?」

「うん。この学園は平民を差別する人は少ないけど、特待生ってことで目をつけられたのかな。上級生の貴族に呼び出されたことがあって」

「あー……よくある嫉妬か」

「そうなのかな? それで、平民のくせに大きな顔をするなとか、不正をしたんじゃないかとか、ただ悪口を言われるだけなんだけど何度も呼び出されてストレスたまっちゃって」


その時のことを振り返っているのか、メーラ嬢が苦笑する。身体に危害を加えられなくても、精神的にじわじわ追い詰められていたんだな。教師に言おうにも、ただ呼び出されて悪口を言われるくらいでは注意もしにくいだろう。


「でもね、ある日たまたまリモーネ様が通りかかってくれて。その貴族たちに言ってくれたの」

「いじめはやめろって?」

「ううん。時代遅れもいい加減にしろって」

「は?」


なんだそれ。普通、いじめなんてひどいことはダメだとか言うもんじゃないのか?


「優秀な平民がどれだけ貴重なのか分かってないのかって。家同士のしがらみもないから、仲良くなれば自領に就職してもらうこともできるのに、有能な人材に嫌われるような真似するなんてアホかって」

「…………」


なんつーか、すげーリモーネらしい。やっぱりあいつは普通じゃないな。


「……それからね、その人たちすっかり変わって。私だけじゃなくて、他の平民の子にも優しくなったんだよ。それは打算かもしれないけど、悪口言われるよりよっぽどいいよね。もしリモーネ様がただいじめはダメだって言ってたら、彼女たちはほとぼりが冷めた頃にまた新しいターゲットをいじめてたと思う。……リモーネ様はすごいよ」


うっとりと語るメーラ嬢。なるほど。そんなことがあれば、そりゃ好きになるな。

メーラ嬢が最も好意を持つ人間はリモーネだとはっきりした。これは他の誰かが入り込める隙なんてなさそうだぞ。……少なくとも、今はまだ。







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