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突然だが、この世界は今、魔物の大量発生という危機に瀕している。
魔物とは家畜や人間を補食する生き物で、魔法もしくは魔力を込めた魔道具でしか倒すことができない。一昔前までは、魔物の数はそれほど多くもなく、定期的に駆除するだけで済んでいたけれど、ここ数十年でその数が一気に膨れ上がった。
その原因はまだ分かっていないが、駆除しなければ死活問題だ。
我がオングロード王国では魔法学園が設立され、魔力を持つ者は15歳になると学園に通うことが義務付けられた。私もアルジェント様も昨年入学し、つい先日進級したばかり。
魔力を使わなければ魔物を退治することができない現状、とにかく人手不足がひどいので、貴族だろうが平民だろうが、魔力があれば問答無用で学園に入学させられることになっている。
「……で、アルジェント様が見初めたお方は、平民なのですね?」
魔法学園内にあるアルジェント様専用のサロンで紅茶を飲みつつ、詳しい話を聞く。なんと、彼が好きになったご令嬢は平民とのことだった。
「そうなんだ。身分差があるから、私から声をかけると迷惑になると思って……」
「う~ん。一昔前と違って、今は貴族と平民の婚姻も増えてますけど……やはりアルジェント様は王族なので、下級貴族ならともかく、平民となると気後れしちゃいそうですよね」
「そうだよな……分かってはいるんだ……」
眉間にシワを寄せ悩むアルジェント様。ん? よく考えたら、そんなに悩む必要ないかも。
「私と結婚してから、その方を側室にすればいいんじゃないですか?」
「はぁ!?」
いいアイデアだと思って口にしたら、アルジェント様にものすごい驚愕の目で見られた。
え、なに、怖い。
「何ということを……! リモーネ! それは君に対しても彼女に対しても最低な行為だ!」
拳を握りしめ、わなわなと身を震わせながらアルジェント様が力説する。
「私は不誠実な真似はしたくない! 君のことは家族のように大切に思っているのだ! そんな不幸な道へ引きずり込むなど、ありえない!!」
「わ、分かりました分かりました! すみませんっ!冗談ですっ!」
あー怖い。でも、私のことを大切に思ってくれているのが分かって、ほっこりする。
婚約を解消したいって言われて、ちょっぴり複雑な気持ちではあるけど、アルジェント様は私にとって大切な幼馴染だ。ここは応援してあげようじゃないの。
「とりあえず、お相手のことを教えて下さいませ。平民でも優秀な方であれば、アプローチ次第で国王から婚姻の許可をいただけるかもしれませんよ」
私がそう言うと、なぜかアルジェント様の目が泳いだ。挙動不審なんですけど! なんか、爆弾発言されそうで怖いんですけど!
私が身構えていると、アルジェント様が覚悟を決めたように見つめてきた。
「彼女は……同じクラスの、メーラ・プロシア嬢だ」
「なっ……なんですってぇ~~!?」
私の絶叫がサロンに響いた。