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納得がいかない。
おかしいなぁ。私が読んだロマンス小説では、婚約破棄された令嬢にはたくさんの美男子が求婚していたのに。
なーんて、現実はそんなに甘くないよね。うん、分かってる。けっして私がモテないわけじゃないんだ。アルジェント様にもオルカにもフラれたからって、私に女としての魅力が無いなんて言わせないもんね! ふんだ!
私はベッドで激しく寝がえりを打ちながら、イジイジと考え込んでいた。
あれ? でもよく考えたら、私は別に本物の婚約者を作る必要無くない?
アルジェント様とメーラさんがくっつくまで、期間限定の恋人を作ればいいんじゃないの?
ぴしゃっと雷に打たれたようにひらめいた。
そうよ! 適当に偽装婚約者を用意して、アルジェント様に私のことは心配ないですよ~ってアピールすればいいのよ!
なーんだ、簡単じゃ~ん。かんた……ん……?
……相手、どうしよう?
初歩的な問題にぶち当たり、しばし目を閉じて熟考する。ちっとも簡単じゃなかった。
……もういいや。考えるの面倒になってきた。オルカでいいじゃん。
ものすごく渋ってたけど、ニセモノの婚約者役くらいなら引き受けてくれるだろう。
やっと明るい気持ちになった私は、そのままぐっすりと眠りについたのだった。
「え? 本当に俺が婚約者やんのか?」
「フリでいいから! ね? ニセモノニセモノ。ほとぼりが冷めたらちゃ~んと解放するから!」
翌日、部室を訪れた私は開口一番、オルカを口説いた。そして、またもや渋られている。
「フリったって……あれだろ? 第二王子に紹介されるんだろ? 後で偽装でしたとか言ったら、俺殺されるんじゃね?」
「バラす頃には、アルジェント様もメーラさんとくっつくかフラれるかしてるはずだから、理由を話せば分かってくれるわ」
「そうかぁ~?」
必死で説得してるのに、なかなかオルカが了承してくれない。このケチめ。
「もっと、お前にふさわしい人間に頼んだ方がいいんじゃねーの? 侯爵令嬢なんだから、せめて伯爵とか子爵とかさぁ」
「そうは言うけど、私、一人娘だから婿を取らなきゃならないのよ。意外と条件に合う人って少ないし、どうせ偽装なら気心知れてる人間のがいいじゃない」
「あー……うー……」
ガシガシと頭を掻いて悩むオルカ。そこへ、ランチアが助太刀してくれた。
「もう! そんな難しく考えずに、婚約者じゃなくて恋人ってことにすればいいじゃない。将来婚約することを視野に入れて、試しにお付き合いしてまーすってくらいの軽い交際ってことで。実際、学園で交際して婚約者を決める人たちも多いんだからさ」
「そうそう。高位貴族だってけっこう次々に交際相手変えてるんだから! 条件も大事だけど、今は恋愛結婚増えてるんだからね!」
「政略結婚しないだと!? また貴族のイメージが……!」
いや、まあ政略結婚もまだあるけどさ。このご時世、いつ魔物との戦いで命落とすか分からないから、家の条件に合う中で一番自分の気に入った人と添い遂げたいと思うのは当然のことだと思うのよね。
年々、魔物の被害が増えているので、そのあたりはおばあ様の年代の方たちも理解してくれている。家にとってマイナスにならない結婚であれば、ある程度自由が認められるようになってきたのだ。
「……じゃあ俺と付き合ったり別れたりしても、お前が嘲笑されたりはしないんだな?」
「え、あ、うん。割と婚約解消って多いから、多少噂になることはあっても嘲笑されたりっていうのは無いかな。今の風潮だと、あの人フリーになったんだって! チャンス! みたいな感じ」
「……もう俺の知ってる貴族はこの学園にはいない……」
もしかしてオルカが散々渋ってたのって、何度も婚約解消になったら私に瑕がつくと思ったのかな? 何よ。いいヤツじゃん!
「……分かった。俺が偽装恋人になってやる」
「やったー!」
相変わらずの上から目線ですが、偽装恋人、ゲットしました~!




